Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第40章 博打
「…どうしたの?エルヴィン」
「まぁそこに座りたまえ」
エルヴィンの落ち着いた雰囲気に、ルーナは言われた通りにソファーへ腰掛け目を瞬かせる。
すると、なんとエルヴィンは紅茶を淹れはじめた。
その様子に慌てて立ち上がる。
「わっ私がやるよ!」
「いや、せっかく君に淹れ方を教わったんだから試させてくれよ」
ルーナは苦笑いしながらまたゆっくりとソファーに腰を下ろし、エルヴィンが紅茶を淹れている間その一挙一動を愛おしげに眺めていた。
この存在がいつまでも私の傍にありますようにと祈りながら。
「君がこないだ教えてくれた通りに淹れてみたんだが、どうだい?」
ルーナは微笑みながら1口紅茶を啜る。
はっきり言って、なんとも言えない微妙な味だ。
美味しいとも不味いとも言えない。
しかしエルヴィンはまるで少年のように目を輝かせてから微笑み、ジッと言葉を待っている。
こんなエルヴィンの表情は久しぶりに見たと思ってルーナは息を飲んだ。
その表情は、いつか幼い頃に木の上で交わした約束のあの日、お互いの手を握ったあの時の微笑みだ。
ルーナはクスッと小さく笑いながら懐かしさに目を細めた。
「エルヴィン…」
「あぁ、どうだ?正直に言ってくれ」
お世辞でも美味しいと言おうと思っていたのだが、予想外にも強く真剣に言われ、ルーナは1度口を噤んだ。
そもそもエルヴィンにはごまかしが効かないしなぁと思い直す。
「…じゃあ正直に言わせてもらうけど…
美味しいと言えば美味しいんだけど、香りと味のバランスから言って、もうちょっと濃いめにしたほうが…蒸らす時間を長くして…」
「そうか!なるほど!…バランスね…ふむ…」
そう言ってエルヴィンは至って真剣な顔で紅茶を味わうように何度も飲んだ。
しかしその表情や雰囲気はどこか無邪気で、2人だけの時にしか見せないそれだ。
いつも自分といる時にだけしか見せない顔と雰囲気、
そしてルーナもエルヴィンの前でしか見せないそれがある。