Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第37章 エゴイスト■
「お前は人のもんに手を出すよりも先に、大切なものを見つけろ」
「…は…知ったようなことを…」
クラムはまだ首もとを手で抑えながら息を荒らげ苦しそうに言葉を発した。
「俺のっ……何を知ってるって言うんです…」
唇を震わせながら、リヴァイを今までにないくらいに鋭く睨む。
「最初から何も無かったあなたに!!俺の何がわかるって言うんです!!!」
リヴァイの目が見開かれ、目の前で叫ぶ男を凝視する。
「言ってましたよね兵長…あなたは地下で生まれ育ち、何もない無価値な存在だったと…感情も何も無かったと……そんな初めから何も無かったあなたに、俺やメリッサの何がわかるって言うんです?」
心臓に、また何かが刺さる音が聞こえた気がした。
微かに、しかしそれは大きく損傷するように痛みだけが帯び始めた。
「持っているものを失ったり、亡くしたり、手放したり…そんなことを何度も繰り返してきた普通の人間の気持ちが…あなたみたいな異常者に理解できるはずがない…」
「・・・確かに俺には分からないかもしれん、…だがそれはお前も同じだろう。他人の気持ちなんかわからねぇ…どんなに知りたいと思っても…1つ残らず知りたいと思っても…知れば知るほどわからなくなる。掌から零れ落ちていく。そしていつの間にか全て零れ落ちて空っぽになって、何も知らなかったと思い知らされるかもしれねぇ…」
いつもそう思っている。
気が付くと、掌にあったルーナの一つ一つが、全て無くなっているんじゃないかと。
そんな日が来るんじゃないかと…
怖くなる。
だからその前に
握り潰して
自分の手で消してしまいたいとさえ思う。
他の誰かの手に渡るくらいなら。