Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第37章 エゴイスト■
「俺にはサラがいます。でも…クラムには心の支えになるような恋人がいない…あいつは怖いもの知らずで前向きで、いつでも元気に見えるかもしれないけど…本当は誰よりも繊細で傷つきやすいんです…それを隠すためにあんなふうに振舞ってるって俺は知ってるんですよ…だからあいつの心が何かの拍子に壊れちまうんじゃないかって…俺はいつもビクビクしてて…」
また涙が零れ落ち、自分はこんなに涙もろかったのかと焦る。
そしてこんなことを言われてもリヴァイ兵長は困るだけなのに何をペラペラと喋ってしまったんだとまた焦る。
「すみませんっ…そんなこと言われてもって感じですよね。」
「…いや…。恋人がいなくても、お前らが心の支えになってやりゃいいだろう。」
カイルはハンカチで再度涙を拭うと、赤い目をして真剣な眼差しをリヴァイに向けた。
「…兵長…それは無理ですよ。恋人という温もりは丸っきり別のものです。兵長もご存知ですよね?」
リヴァイの瞳が僅かに揺れた。
「もしも死にたいくらい辛いことや悔しいことがあったとき、ルーナさんという存在がいなかったら、と考えたことはありますか?」
考えたことは、あるにはある。
けれどそれは考えるだけ無駄だと思ったのだ。
なぜなら、もうルーナという存在を知ってしまったからだ。
その存在を感じながら、いなかった場合のことなど考えられない。
「俺は確かに、あいつ無しではやってけねぇと思ってる。もしもあいつが隣にいなかったら…苦しみだけが自分を支配するだろう。だがそれはあいつの存在を知っている現在軸の話だ。…知らなかった頃、恋人じゃなかった頃の話だったらきっと、なんとも思わん。」
2人だけの静かな食堂に冷たく鳴り響くその言葉は、現実味を帯びているようでどこか不思議な妙な感じがした。
「ルーナさんの言っていた通りですね」
「…あ?」
カイルが薄ら笑みを浮かべて俯き気味で言う。
「やはりリヴァイ兵長は脆くて繊細だ。」
リヴァイのいつもの不機嫌そうな仏頂面がこちらを向く。