Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第37章 エゴイスト■
リヴァイの隣でテーブルを拭きながらカイルは思った。
もうこんなに綺麗なのに…
これでもまだまだ完璧じゃないのか?
なんなんだよこの人の掃除観念って…
「なぁ、カイルよ…」
「はっはいっ!」
カイルが手を止めて隣のリヴァイを見つめると、リヴァイは口元の三角巾を下に提げた。
「お前…少しは落ち着いたのか…」
なんのことだか分からず黙りこくって固まっていると、
「メリッサのことだ」
そう静かに呟き眉を顰めるリヴァイが雑巾をパタンとテーブルに置いた。
メリッサが死んで、自分の心情を心配してくれているのか、そう理解する。
「あ…っと…まぁ…正直落ち着いたというと嘘になります。辛いですよ…あいつとはずっと親友だったんです。明るくて負けず嫌いで心配性で…良い奴だった」
自分の握る雑巾に無意識に力が入るのがわかる。
そして目頭が熱くなる。
あいつの話をすると…やっぱりまだダメだ…
「そうか…あいつは…クラムはどうだ?」
クラムという名前が出てきてピクリと眉が動く。
「あいつは…俺よりももっと沈んじまってるでしょうね…あいつもメリッサと兄妹みたいに仲が良かった。恋人じゃないのにいつも一緒に馬鹿なことして笑いあってて…」
そこからの言葉がなぜだか出ない。
涙が零れ落ちるのを堪えているせいで喉の奥に何かが詰まっているからだと気付いた時にはリヴァイに腕を引かれ、椅子に座らされていた。
リヴァイは隣でテーブルに腰掛ける。
その優しさにほんのりと暖かい何かが胸に流れ込んでくるのがわかり、更に涙を堪えなくてはならなくなった。
「俺のことはいいんです…俺を心配してくださるのなら、クラムを心配してやってください。…あいつの方が可哀想だ…」
リヴァイは何も言わない。
その代わりにハンカチを差し出してきた。
ハッとなってリヴァイを見上げると、視界が歪んでいる。
そこで初めて自分が涙を流していることに気が付いた。
「すい…ませ……」
ハンカチを受け取り、涙を拭う。
そのハンカチはいつものリヴァイの石鹸のような香りがして、それだけで心が安らぐような感覚がした。