Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第37章 エゴイスト■
カイルはクラムのことを考えていた。
今夜ルーナさんと二人きりになりたいから、できるだけ長い時間リヴァイ兵長を引き止めておいてくれと言われた時には心底驚いた。
そんなことを言い出すクラムは初めてだったからだ。
そしてそんなに真剣な顔をしているクラムも。
けれどカイルは嬉しかった。
今まで明らかにルーナのことを諦めていたようなクラムが、ついに積極的になってくれたことが。
だからメリッサの分まで自分にできることを精一杯やろうと思ったのだ。
応援してやりたい。
最後まで俺はお前の見方であり親友だ。
ここまですればかなりの時間は稼げると思ったのだが、
リヴァイ兵長のあまりにも素早い対応とテキパキとこなす掃除に戸惑いを隠せなかった。
思いのほか早くに終わりそうで内心とても焦っていた。
しかもリヴァイ兵長はもう自分一人でいいといって全員を帰した。
このあとリヴァイ兵長がどのくらい時間をかけるのかわからないが、きっとリヴァイ兵長のことだからすぐに完璧に終わらせてしまうだろう。
俺にはあとは祈るしかできない。
頑張れよ、クラム。
ふと振り返るとこちらを見つめるリヴァイと目が合ってビクリとなる。
何かを探るような、そんな鋭い眼光だ。
波打つ鼓動を誤魔化すように、いつものにこやかな笑顔を作って頭を下げてから食堂を出ようとしたそのとき、
「カイル、お前はまだ残れ。」
「えっ…」
ほかの兵士たちの視線が集まり、クスクスと笑う声がする。
「サボってることバレたんじゃね?頑張れよ、カイル」
同期に肩を叩かれ困惑したままカイルはまたリヴァイの方へと歩みを進めた。