Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第37章 エゴイスト■
猫の首根っこを掴んでいた兵士が手を離すと、リヴァイがそのまま抱きかかえた。
よく見ると、両前足だけが靴下のように白い黒猫だ。
大人しくなったその様子に、カイルが驚いて猫の顔を覗き込む。
するとその猫はリヴァイの腕の中から手を伸ばすと、盛大に爪で引っ掻いた。
「っ!!あーーー!!!」
カイルが頬に手を当てる。
ツーと傷ができたのを見て周りが唖然とし、同時にケラケラと笑った。
「お前ら笑うなよ!あー痛てぇ…くそ、凶暴猫め」
「お前が不用意に近付くからだろうが」
リヴァイはそう言いながら猫を宥めるように背を撫でた。
安心したように、しかし疲れきったようにリヴァイの腕の中で大人しく蹲る猫を見て、皆が目を丸くする。
先程の凶暴な獣とは別の何かなのではないかと思ってしまったくらいだ。
そしてなぜだか目の前の猫を抱き撫でている絶対想像もつかないようなリヴァイの姿に僅かに赤面してしまう。
「へ、兵長…そいつをどうします?」
「外へ逃がしてやれ。」
そう言って目の前の兵士に猫をゆっくりと渡す。
「あ、はい。えと…この肉は?」
「それはこいつにくれてやれ。腹が減ってたんだろう」
だからどこかから忍び込んでここを荒らしていたのか…
と誰もが頷くが、リヴァイは違うような気がしてならなかった。
こんなところにわざわざ猫が忍び込めるような隙間はないし、なにか妙だ。
ここまで散らかるか?と。
「お肉勿体ないなぁ〜」
そんなことを口々に言いながら猫を連れて出ていく兵士をよそに、リヴァイは残った者たちに腕を組んで睨みを利かす。
「てめぇら、掃除を開始するぞ。終わるまで部屋に戻るのは禁止だ」
ピシャリと命令された兵士たちは顔面蒼白にしながら返事をするといそいそと片付け始めた。
「チッ、汚ぇな…」
リヴァイも掃除に取り掛かろうと腕をまくる。
「掃除の達人リヴァイ兵長を連れてきてよかったのかよくなかったのか…」
「まぁでも兵長も手伝ってくれんなら早く終わるだろ」
コソコソと言い合う者たちにカイルはため息を吐きながらボソリと耳打ちした。
「まぁ細かいことはリヴァイ兵長に任せてさ、俺らは掃除するフリして気付かれねぇようにサボってようぜ」