Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第37章 エゴイスト■
「あなたの悲しみを、少しでも減らしたい」
ある日クラムにそう言ってきたのはルーナだった。
泣き腫らして充血した目を向けると、想像していたのとは違った表情がそこにはあった。
てっきり眉をひそめ、苦しそうな、泣きそうな、そんな顔をしたルーナがいると思っていた。
けれど違った。
そこにいたのは、真剣な目をした、玲瓏な面持ちのルーナだった。
「あなたの気持ちは、よく分かる。私も今まで数え切れないほど何人も…友人を、仲間を、家族を、大切な人を失ってきた。」
クラムは何かを喋ろうとしたが、泣きすぎていたせいか喉奥に粘着質な唾液が絡まり、うまく言葉が発せられなかった。
代わりに口の隙間から出たのは微かな悲鳴のような嗚咽。
「カイルにはサラがいて…サラにはカイルがいるでしょ。
でもあなたには今、心の支えになってくれる人はいないんじゃない?」
クラムはその言葉に、俯きながらゆっくりと首を縦に振った。
「来て」
突然ルーナに腕を引かれ、ずんずんと歩を進められる。
「え、ルーナさん…ど、どこへ」
掠れた小さな問いかけは聞こえていないのかもしれない。
何も言わずに引きづられるようにして兵舎裏へと連れてこられた。
「…え…あの…」
壁際にいるルーナを、腫れあがった赤い目のまま訝しげに見つめる。
するとみるみるルーナの眉が下がりだし、懇願するような潤んだ瞳で見つめられ、クラムの鼓動が早くなった。
ずっとその表情で見つめられたいと思っていた。
その、切なげで、妖艶で、色欲を纏ったような、
まさに、女のその顔で。
「あなたの気持ちが、分かりすぎるから…私も同じくらい辛い。自分も消えちゃいたいくらいにしんどいのに、その思いをどこにも逃がす術がない。ぶつけられる人もいない。…わかるよ、それ。」
私だってずっとそうだったから…
そうルーナが静かに呟いた。
クラムの目からまた大量の雫が零れ落ちる。
それを眉をひそめて柔らかく微笑んで見つめるルーナ。
「ね、このままだとあなたは…壊れてしまう…」
クラムは嗚咽が混じりそうになり、なんとかそれに耐えながら俯いて顔を隠す。