Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第36章 パラドックス■
「ルーナ」
瞬時に頭が振り向いた。
心底驚いた顔をしていて、本当に全く気配すら感じていなかったのだとわかる。
「リヴァイ…」
「お前はやっぱり昔と変わってねぇな。俺が背後から迫っていてもまるで気付かねぇ」
ルーナは懐かしそうに目を細めながら薄ら笑った。
「…そうだね。」
リヴァイも隣に並び、空を見上げる。
「今夜は月は出てないみたいなの…」
「そうみてぇだな」
"ルーナって月の女神様の名前だね。
月にはいろんな力があるんだ"
リンクが言っていた言葉が脳裏で反芻される。
結局あの時はそれ以上何も教えてくれなかった。
一体どんな力があるのだろう?
「どこの掃除をしていたの?」
「浴場だ。お前は?」
「食堂。それと今はここやってた」
お互い結局掃除をしていたということは分かりきっていた。
だからお互いの心情が読めてしまい辛くなる。
「懐かしいなぁ…こうして昔よく2人で掃除して、夜空を眺めたよね。ここで、いろんな話もした。それでだんだん仲良くなってお互いのことを知っていって…」
「…あぁ。もう5年もたった。いや…まだ5年か…」
「うん。この5年間でたくさんリヴァイのこと知れたよ。」
「俺もお前のことを知れた。でも…」
リヴァイがルーナの体を包み込んだ。
ルーナが驚いた顔をして箒を落とす。
「お前のことをもっと知りてぇって…欲張っちまう…まだまだ知れてねぇって…思っちまうんだ…」
随分前から感じていたことだった。
どれだけルーナのことを知れても、ふわりとそれが掌から逃げていってしまうような感覚。
本当は違うんじゃないかとかこうじゃないんじゃないかとかいう疑念や戸惑い。
そして知れば知るほどに思うのだ。
「俺はお前のことをホントは何一つ…知らねぇんじゃねぇか」
ぎゅっと抱きしめる腕の力が強まる。
このパラドックスは、奇妙なことに、共に年月を重ねるほどに膨れ上がっていく。
わからなくなっていく。
目の前の相手が、どういう人物で何を考えていて、どうしたいのかということが。