Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第36章 パラドックス■
今まで散々堪えていた嫉妬心が爆発寸前だった。
今すぐなにかにぶつけないと頭がおかしくなりそうだった。
情だとしても、許せなかった。
結局迫ってきたのはクラムの方からだったということだ。
だからあいつは許せない、絶対に。
それに、メリッサと違ってあいつはまだ生きてるんだ。
どういうつもりなのか、絶対に問いつめてやる。
そう思いながら握っていたペンをへし折ってしまった。
パキッという音で僅かに正気が戻る。
その日の夜は、ルーナもリヴァイもどちらの部屋に行くこともせず、1人の夜を過ごした。
しかし当然どちらも寝られなかった。
そういう時にとる行動といえば、幸か不幸か同じなのだ。
リヴァイは2時間かけてみっちり大衆浴場の掃除を終えると、屋上へ向かった。
深夜1時をとっくに回っている。
しかしそこには箒を持ったまま星を見上げているルーナがいて唖然とする。
こいつも掃除に来ていたのか、と。
話しかけるか、放っておいて出ていくか迷ったがやはり体は素直で、気がついたら背後まで歩を進めていた。
ルーナは自分が背後にいることに気が付かない…
思わず頬を緩ませる。
出会った頃もいつだってそうだった。
自分が背後に迫っていても絶対に気が付かないルーナに散々注意を促したものだ。
"リヴァイだとなぜか気付かないんだもん"
そうやっていつも言い返してきた。
懐かしすぎて
ずっと遠い昔のことだった気がして
その想い出が今になって鮮明に蘇ってきて
記憶とはなんて脆く儚いものなのかと思ってしまう。
記憶に想い出と名付けても、それはいつか必ずボヤけ、そして完全に脳から抹消される。
その事にすら気が付かずにまた新たな記憶が上書きされ、そしてまたそれを繰り返していく。
もしも目の前にいる大切な者それ自体が想い出となり記憶となった時、
脳に塗りたくってきた全てのことはいつか思い出せなくなり、あとかたもなく、何も無かったかのように、なんのことだったのかもわからなくなって、
そして完全に消えていくのだろうか…
そう思ってしまうのだ。