Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第36章 パラドックス■
そしてずっと心のどこかで祈っていた。
どうかその時のルーナは正気を失っていたルーナであってくれと。
しかしそれは無惨にも音を立てて崩れた。
次に会った時のルーナの違和感を見抜いてしまったからだった。
普段から随分と自分は彼女のことを事細かく見ていたのだと実感させられるほどにそれは微かだった。
だがリヴァイにはそれがどんなに微かでもやはり分かってしまったのだ。
エルヴィンの部屋から出てきたであろう書類片手のルーナが、自室へ入ろうとしているときにバッタリと会う。
パチリと目が合い、僅かな沈黙が流れる。
「あ、リヴァイお疲れ様。」
もうその時点でおかしいと見抜いてしまった。
その僅かな沈黙とルーナが声を出す間がいつもよりほんの少し長い。
それはほんのコンマ数秒であり一瞬くらいだろう。
しかしリヴァイには分かってしまった。
「あぁ。」
ルーナはにっこり笑顔を作ってそのまま自室に入っていった。
そしてまたここでも気付いてしまう。
一瞬の瞳の揺らぎ、唇の動き、眉の角度。
なぜこんなにもこいつのことを全て細かくわかってしまうのだろうと、そんな自分の鬼畜さを呪った。
気が付かなければ、こんなに苦しくなることも痛みを感じることもなかったはずなのに…
リヴァイはルーナが消えていったその扉に手をかけた。
ノックなしに開けそのまま入り込み後ろ手に閉める。
目の前には机の上の書類を整理する手を止め、振り返って目を見開くルーナがいる。
「びっくりした…どうしたの?」