Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第36章 パラドックス■
「うん…そうだね…兵団に開いた穴は、私が埋める」
ハンジが決意したように俯いたまま声を漏らした。
「あぁ。そして私がいなくなった後の穴も、君が埋めてくれハンジ」
「…え?」
バッと顔を上げて振り向くと、上目遣いで真っ直ぐ見つめる大きな青い瞳がある。
「次の調査兵団団長はハンジ・ゾエ。お前だ。」
ガチャ…ドンッ
ノック無しで入口の扉が開き、書類の束か何かを机に置いた音がした。
エルヴィンが何事も無かったかのような顔つきで扉を開くと、執務室にはやはりリヴァイが立っている。
「…っ…お前そこにいたのかエルヴィン。まさか居眠りでもしてたのか?書類はここへ置いておくぞ」
寝室から出てきたエルヴィンに驚いた表情をしたかと思えば、すぐさま心底疲れたという顔に戻して踵を返そうとするリヴァイをエルヴィンが引き止めた。
「待てリヴァイ。こっちへ来い」
「あ?」
訝しげなリヴァイを寝室に招き入れる。
「なっ?!ハンジ?…!!おいルーナがなぜここで寝ている」
「倒れたんだ。仕事中に。」
エルヴィンの言葉にリヴァイの目がみるみる開かれ、ルーナの元へ駆け寄る。
「ルーナ……くそ……」
どうしてそのときまた自分はついててやれなかったのか…そういった顔で悔しそうにルーナを見下ろす。
「リヴァイ、最近のルーナをどう思う?お前といる時はどんな感じだ?」
「…元気がねぇとは思うがあんなことがあった後だ。今のところ正気を失っているような時はねぇが。ただ…寝ている間に体を傷つけちまってたらしい。昨夜は一緒に寝たからそれはなかったはずだが…昼間はお前らの方が一緒にいるから俺には分からねぇよ」
「昼間も前に比べてパワーがない感じだよ。まるでこの世の全てが面倒くさくなってるような…妙な感じだ。」
ハンジが立ち上がって力なく言った。
「リヴァイ、お前はどう思う?ルーナをウォールマリア奪還作戦に参加させることを。」
リヴァイが長い息を吐き、ルーナを見下ろしたまま冷たい声で答える。
「それは無理なんじゃねぇか。途中で暴れるか正気を失うかされてみろ。そのまま見捨てて敵と戦えってか?できるかよ…」
誰の息遣いすら聞こえない沈黙が流れた。