Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第36章 パラドックス■
「せっかく最近落ちついていたのに…私の失態だ。」
壁外でのことを悔やんでいるのだろう、肩を落として顔を歪め、ルーナの眠るベッドに腰かけるハンジを見下ろしながらエルヴィンが言った。
「そのことに関してはもう過ぎたことだ。いつまでも引きずるべきじゃない。それに今回のことがあったからまた1歩前へ進めたことも事実なんだ。君だって上に立つ人間として、余計な感情にいちいち振り回されているようではダメだ」
「あぁ、そうだね、うん、けど…ルーナが心配なんだよ。どうしたらいいと思う?」
するとエルヴィンは扉に背中を預け、真剣な瞳で真っ直ぐとハンジを見つめてから声を出した。
「ウォールマリア奪還作戦には、ルーナはここへ置いていこうと思っている。」
「ええ?!」
ハンジは目を見開いた。
ルーナは兵団にとって重要な戦力な上に、エルヴィンと同じように指揮系統にも勤めてきた。
彼女がいるだけで皆は心強くなり、恐怖で固まっている緊張をも解してくれるような存在だった。
ルーナ1人いないだけでだいぶ士気が下がってしまうような気がしてならない。
「ちょっとそれは…本気なのエルヴィン?!」
「私は冗談は言わない主義だが。」
「や、ま、そうかもしれないけどっ…」
「恐らく今のルーナには無理だ。兵士ではなく、1人の人間に戻ってしまっている。たくさんの大切な者の死を目の当たりにして精神が崩壊し始めている。リヴァイの存在でどうにかなると思っていた…夫婦という形を作りあげれば…と。だが遅かったようだ。もうルーナの心は修復不可能な穴がいくつも開いてしまっているんだよ」
ハンジはルーナの頬を撫でてから俯いた。
「その修復不可能な穴を違うもので埋めてやれればいいと思っていたのだが、やはり形が違うとうまくはめ込めないらしいな。だから私たちにできることは、その穴をせいぜい増やさないことだ。ルーナの命が大切なら。」