Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第26章 4人の影
止血を施し、ルーナをベッドに寝かせたリヴァイは血で汚れている床に視線を落とした。
「くっそ!!!」
一部始終をただ顔面蒼白にして見ていたクラムはリヴァイのその声にビクッと身体を震わせた。
床に尻もちをついたままのクラムに気が付いたかのようにリヴァイがつかつかと歩み寄り、手を差し伸べてきた。
クラムは驚いた表情のままゆっくりとその手を掴むと、ソファーに座らされた。
「悪かったな…」
突然トーンが低く落ち着いた声で言われ、クラムはなんと言っていいのか分からずに黙りこくる。
リヴァイは、ルーナがこうなった時点で状況を掴めてはいたので、クラムに詳細を尋ねた。
「そうか…本当にすまなかったな。」
「いえ、無理もないです。あんな状況を見たら誰だって勘違いしますから」
「お前を殺しちまわなくて良かった。」
その言葉に一瞬ビクリとなるが、クラムは笑顔を作った。
そもそも目の前にいるのがリヴァイ兵長で、しかもこんなに間近で対面して話をすることになるなど予想外なことにはちがいないのだが、満更でもない様子で落ち着いていた。
リヴァイは目の前のクラムを、妙なガキだと思った。
自分に睨まれただけでたいていの奴は怯え切るし、その上あんなに首も締められドヤされたのなら本来失禁してもおかしくない。
会話すらまともにできないのが普通だろう。自分はあの時本気で殺しそうな気迫だったはずだ。
それなのにこいつはビクビク震えているでもなくむしろハキハキと言葉を喋り笑顔まで作っている。
自分を殺そうとした男なんだぞ…
まして目の前にいるのはこの俺だ。
「ルーナのことは…悪いがここだけの秘密にしてほしい」
リヴァイは俯いたまま力なく言った。
「あ、それはもちろん大丈夫です。俺にも何かできる事があればいいんですけど…」
ベッドに眠るルーナを心配そうに見つめるクラムにリヴァイはため息ひとつ吐いてから目を逸らしながら言った。
「お前はなにもしなくていい。こいつをどうにかしてやれるのは俺しかいねぇ」
「そうですか…」
「クラムとか言ったな。お前はもう出てっていい。早く飯を食いに行け。まだなんだろう?」
「はい…あ!ではお二人の分もこちらへお持ちしますよ!」
リヴァイの返事も聞かずに勢いよく立ち上がり、敬礼をしたかと思えばそそくさと部屋を出ていってしまった。