Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第25章 指輪と水晶
「ならせめて、これくらいはさせてくれ」
そう言ってエルヴィンは机の上に1枚の紙を差し出した。
それを見て2人は目を丸くする。
正式な婚姻届だった。
「エルヴィン・・・なぜお前がこんなものを持ってる」
「このくらいのものは常に常備してあるさ。」
それは本当は嘘だった。
エルヴィンには昔から想いを寄せていた人がいた。
しかし、兵士という立場上いつ死ぬかもわからない自分が家族を作れる自信がなかった。
それに自分は調査兵になりルーナとの夢を叶えたいという思いの方が強く、その一心でここまで来た。
つまり自分は愛する人との結婚よりも、死ぬまで調査兵団に己の身を捧げるほうを選んだ。
いつしかその女性は同期だったナイル・ドークと結ばれ、今は3人の子供がいる。
後悔はしていないつもりだ。
それなのに、なぜだかこの婚姻届は捨てられなかった。
ルーナが意を決したように書類に書き込んでいく。
その後にリヴァイが躊躇なくスラスラと書き込んでいった。
書き終えた2人の前でエルヴィンが判を押した。
"婚姻後に名乗る姓...ルーナ・アッカーマン"
その見慣れない文字の羅列を見つめ、エルヴィンは目を細めた。
幼い頃から無邪気に自分と戯れてきた少女のルーナはもういない。
今目の前にいるのは妹ではなく、紛れもなく一人の男の女。
どこかで、ルーナは自分だけのものだと思っていた。
自分とルーナの関係は特別なのだと。
彼女のことを理解してあげられるのは自分だけだとも思っていた。
今までずっと。
しかし、きっともうそれは違うのだろう。
「明日役所にこれを提出してくる。」
朗らかにそう言うエルヴィンに、ルーナは嬉しそうに顔を綻ばせ、リヴァイは照れ隠しのように目線を下に落とした。