Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第24章 解離■
その後、医者が来て、新たに処置を施してくれた。
かなり深い傷で何針か縫われたが、ルーナが切ったのは脈の方ではなく幸い肘から手のひらにかけてで範囲は広いが命に別状はないようだった。
「そうか...そんなことをルーナが...」
ハンジは顔を歪めて俯いた。
「やっぱり、俺の言った通りこいつはショックで頭がイカレちまった。そうだろう?」
「...わからない。だけど、ルーナの大切な人間が立て続けにこれだけ死んだんだ。無理もないよ...私だって正気を保っていられるのも今だけかもしれない...」
ハンジはルーナの頬を撫でた。
「むしろ、この子は今までよく耐えてきたと思うよ...
いつも思ってた。リヴァイが兵団に入る前だって当たり前のように大勢仲間たちが目の前からいなくなっていった。もう10年以上もルーナはそれに耐えてきたんだ...今まで...ずっと...」
ハンジからこぼれ落ちる涙がルーナの頬を伝った。
「...こいつは...涙が流せねぇんだ...」
「あぁ...知ってるよ...それがどれだけ辛いことか...」
リヴァイは僅かに表情を変えた。
そうか...そうだ...
俺は考えたこともなかった。
大切な人が死ぬ。家族が死ぬ。仲間が死ぬ。
それがどれほど辛く苦しくショックなことかは充分自分にだって理解できる。
でもこいつはそれを涙を流したり泣き喚いたりすることで少しでも発散させることができない。
こいつが本当にショックを受けていることは、周りが死んだことに対してよりも、それを泣いて悼むことができない自分自身に対してなんじゃないか?
「こんなことがあっても涙が流せないなんて...」とルーナは口癖のようにいつも言っている。
俺だって涙は出ないが、そのことを辛いと思ったことも罪悪感を感じたことも無い。
俺は、悲しみや悔しさを涙によって発散するのではなく自分の力によって怒りで発散させている。
人類最強と言われるにまでなった普通の人間にはない大きな力が湧いてくるのを常に実感している。
それに...
こいつは俺より相当マトモな人間だ。
人殺しや拷問になんの躊躇もない俺のような異常者ではない。
俺から言わせれば普通の女だ。
そんな普通の奴がこうなることはむしろ当たり前なんじゃないか?