Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第5章 2人の夢
野犬に襲われたときもあった。
どこまでも追いかけられ、もう息が切れそうだと言うところで、やはり自分より幼いルーナが先に転んだ。
そこに飛び掛るようにして野犬が牙を向き口を開けて迫ってきた。
エルヴィンはルーナに覆いかぶさり彼女を守ろうとした。
しかしスルリとエルヴィンの腕をぬけ、彼女は野犬に腕をかざしその腕に噛み付いた野犬の口元からは血が流れていた。
「うわああああー!!ルーナ!!!」
エルヴィンは叫び声を上げるがルーナは血を流した腕を噛み付かれたまま、そこにいる野犬と目を合わせていた。
酷く鋭い眼光で、目を背けずに...
目を逸らさないその気迫に負けたのか、野犬はゆっくり牙を離し、一目散に山の奥へと走って行った。
彼女の家に急いでルーナをおんぶして届けると、泥だらけの2人と血を流しているルーナに真っ青になった彼女の父とエルヴィンの父が駆けつけてきた。
医者のルーナの父は迅速に落ち着いて治療をし、ベッドにルーナを寝かせた。
事情を聞いた父はやはり顔を曇らせていた。
「エルヴィン、お前は男だし年上だろう。なにをやってる。」
エルヴィンの父は彼を見下ろしながら静かに言った。
俯き、ごめんなさいと言おうとした時、
「違うんだよおじさん!!!!エルヴィンは悪くないの!私がエルヴィンが止めるのを聞かないで山に入っていったから!いつもそうなの!エルヴィンじゃなくて私がいつも進んで行っちゃうの!!」
そうだ...
いつも自分は自分の考えで動いていない。いつも彼女の背を追いかけて彼女の考えに従っているだけだ。
自分一人ではなにもできやしない。
どうして自分はこんなにも彼女に守られてばかりなのだろうか。
ずっとこの先もこうなのか?
ずっと自分は彼女に手を差し出され、彼女に手を引かれ、彼女に引き上げられ、彼女の背を見て歩いていくだけか?
ずっと彼女の後ろをついて歩くことしかできないのか?
彼女の前には行けないのか?
自分が彼女の手を引いて、前を向いて進んでいくことはできないのか?