Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第20章 証拠■
時計の音だけがカチカチと響いている。
風がない外の空気も静かだ。
こんな時に限って鳥の鳴き声も聞こえない。
ラベンダーの香りが2人の周りを漂う。
シンが部屋に入ってきてからそれは更に濃くなったように感じた。
ランプの灯りと月の灯りが、ルーナとシンの顔を思いのほかハッキリと照らしている。
互いの息遣いすら聞こえずなんとも言えない不思議な空気が流れた。
いつもそうだ。
シンといると、なぜだか不思議な空気に包まれる。
どんな感情に支配されていても、シンのこの不思議な雰囲気に包まれていつもルーナは心を解し助けられてきた。
だが今回は、そうではない不思議さが空中を纏っていた。
まだ何も言っていないのに、なぜだかシンは真顔でルーナとソファーで向かい合っている。
シンの真顔
こんな顔を見たのは初めてだ。
まさしく無の表情だ。
常にころころと表情豊かなシンからは予想もつかない顔だ。
先程からルーナが何かを話そうとするように僅かに口を開けては閉じたり、目を逸らしたり戻したりしているのを、
促したり制止したりするわけでもなく、ただジッとその表情でみつめている。
「・・・あのね、シン。いろいろ話そうと...思ったんだけど...やっぱり結論から先に言わせてほしい...」
意を決したようにふるえる声をなんとか搾り出すルーナ。
「・・・はい」
少しの間を置いてからシンの声が返ってくる。
「私は...あの人と...リヴァイと...やり直したいと思ってるの」
「・・・」
返事はやはり返ってこない。
シンの顔を見ることがどうしてもできない。
ルーナはギュッと目を閉じ、俯きながら視界を閉ざした。