Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第16章 トロスト区攻防戦
「...!あれはっ!」
奇行種と対峙していたのは紛れもなくシンの班だった。
その巨人は一心不乱に腕を振りまわして突っ走っており、なんとかうなじを狙おうとする兵士たちも、その走る早さと振り回す腕を避けるので精一杯で一向に定まらないでいる。
「僕が囮になります!君たちは脚を!」
「おっおい!シン!」
仲間の声を聞く前にシンがめいっぱいガスを吹かし、巨人の顔の前まで飛んだ。
すると巨人は一気にスピードを落とし、シンを目掛けて腕を振り、口を開けながら追いかけていく。
「チッ、ロン毛野郎が」
リヴァイがスピードを上げたその時、仲間が巨人の足を削いだのと同時に巨人がつまづき、その勢いでシンのワイヤーがずれた。
「うぁあっ!」
巨人の口の中へ入りそうになるすんでのところで、ブワッとものすごいスピードで自分の体が浮くのをシンは感じた。
バサッと屋根に下ろされ、一瞬のことすぎてなにが起きたか分からないシンは呆然としたまま顔を上げると、リヴァイの鋭い眼光が自分を見下ろしていた。
「貸せ」
そう言ってシンのブレードを取り上げると、思いっきり投げつけ巨人の目に命中させた。
何も見えなくなった巨人は奇声を上げながら、動きを止める。
リヴァイはすぐさま方向転換し逆手でブレードを握り巨人のうなじを回転しながら削いでいった。
その全てが一瞬のことすぎて、シンを含めそこにいる誰もが呆然と尻もちをついている。
リヴァイは蒸気を上げて絶命していく巨人の目からシンのブレードを引き抜き、再びシンのいる屋根へ降り立った。
そのブレードを、取り出したハンカチで丁寧に拭きあげ、
「ほらよロン毛」と言ってシンに手渡した。
「リヴァイ兵長...あ...りがとう...ございます...」
「情けねぇ面してんじゃねぇ。早く立て」
シンはよろよろと立ち上がった。
「僕は...もうあの時...ダメかと思って...死ぬ覚悟をしてしまいました」
「てめぇに死なれたりしたら困るからな」
リヴァイは鋭い眼光で背の高いシンを睨み上げたかと思えば、すごいスピードで飛び去って行った。