Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第16章 トロスト区攻防戦
「ルーナ...さん?」
ペトラが冷や汗を垂らしながらルーナを見た。
ルーナはもう手遅れだと思った。
巨人に齧られた部分からは血が止まらず止血は効かない。
みるみると顔面蒼白になっていくその兵士の脈は静かになっていき、目からは色が失いつつある。
「ごめん...ペトラ...」
そう言ってルーナは俯き首を振った。
ペトラは全てを理解したように涙を零し始めた。
そこへストンと勢いよく飛び降りた音がし、顔を上げるとリヴァイがいた。
リヴァイはルーナに気づくと一瞬わずかに目を大きくしたが、いつもの不機嫌そうな目付きに戻った。
久しぶりに正面からリヴァイの姿を見た気がする。
会議などの時も向かいなどには座らず、横顔しか見えない位置にあえて座っていたからだ。
ルーナはなんとなく目を逸らした。
「そいつはどうだ?」
ルーナの代わりにペトラが答えた。
「血が・・・止まりません」
リヴァイが顔を曇らせた。
その時、「へぃ...ちょ...ぉ」
とその兵士がリヴァイに血まみれの手を伸ばした。
ルーナは信じられないものを見たように目を見開いた。
この兵士はもう意識がなく力も残されているはずが無かったからだ。
しかし、リヴァイがいるとわかった途端、目を開き、最期の力を振り絞っている。
余程、リヴァイを尊敬していたのだろう。
「...俺は...人類の役に...立てた...でしょうか...このまま...なんの...役にも...立てずに...死ぬの...でしょうか...」
ルーナはいたたまれなくなり、キュッと目を背けた。
それは死にゆく兵士の誰もが感じるであろう言葉だからだ。
するとリヴァイは血まみれの兵士の手を強く握った。
そこからはポタポタと血が滴り落ちる。
潔癖症といえど仲間の血は全く気にしないリヴァイの相変わらずの優しさにルーナは目を細めた。