Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第14章 画家
今回の壁外調査は、日帰りであり、天候も良かったこともあり、長距離索敵陣形は問題なくうまく事を運んだ。
しかし、やはり負傷者と何名かの死者を出してしまったのも事実だった。
ルーナはリヴァイ班とは離れた場所に位置していたため、リヴァイ班の安否が気になりすぎて、巨人に叩かれそうなすんでのところで違う兵士に助けられてしまったくらいだった。
リヴァイ班の誰か1人でもリヴァイの絵を渡せなかったら?
考えただけで胸が苦しくなった。
次の日
医務室の中は昨日の負傷者で溢れかえっていた。
息を引き取り、ほかの仲間たちが泣きながら囲っている光景や、痛みに苦しむ兵士たちの姿、それを医者とともにルーナが忙しく介抱している姿があった。
画家は医務室の前でポツンと立ち、その光景を眺めていた。
「よぉ、じぃさん」
後ろから声をかけられ振り向くと、リヴァイの姿があった。
「わしはどうやら思い違いをしていたようだよ...」
「あ?」
「わしは絵に興したときにわしの思う美しい者のみを描こうと決めているんだ。ここへ来てもそのつもりで人選していたが、わしは間違っていた。この兵団にいる者たちは全員美しい。わしの眼鏡はどうやら曇っていたようだ」
画家はそういいながら、眼鏡を取り眉をひそめジッと医務室を見つめた。
負傷している兵士や、死んでしまった兵士の中には、自分が描こうと思っていた者もいた。
きっとここにあるこの無惨な光景は自分の知らないところで幾度となく繰り広げられてきたのだろう。
仲間が減り続けても、ここにいる者たちは前に進み続けている。
死者を悼む余裕さえも与えられず。
それでも人類に心臓を捧げると誓った兵士たちは残酷な日々と向き合いながらも、心臓の止まるその一瞬まで全力で羽ばたき続けている。
「・・・それは?」
ふとリヴァイの手に握られているものを見て言った。
「あぁ、これは...昨日死んだ奴らの生きた証だ」
それは兵服の胸に付いている自由の翼のエンブレムだった。
丁寧に切り取られている血に染ったそれを見ながら、画家はこくんと頷くと静かに言った。
「決めたよ。わしはこの兵団にいる全員を描く」
「・・・そうか。頼むぞ」
リヴァイは苦しむ兵士たちを見ながら険しい顔で言った。