Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第61章 心臓を捧げよ
「…というわけだ!じゃあねみんな!」
「ま、待ってよハンジ…!」
ハンジは振り返ると、興奮気味に言った。
「あんなに間近でいっぱい巨人が見られるんだ!この期を逃すことはできないよっ!」
ハンジの腕を掴み、眉間に皺を寄せ口をへの字にしているルーナのその手に自らの手を重ねる。
「ルーナ。今までこんなダメな団長についてきてくれてありがとう。けれど、まだ後を頼まなくちゃならなくなった。ずっと戦わせ続けてしまってごめん。」
ルーナは奥歯を噛み締めて俯いた。
言いたいことがたくさんありすぎて、何も出てこない。
今までずっと、親友みたいに一緒にいたハンジ・ゾエという一人の人間が今、心臓を捧げ終わってしまう。
ずっと自分を助けてきてくれた。
心の支えになってきてくれた。
まだリヴァイと恋仲ですらない頃からずっと、いつも私たちの味方でいてくれた。
「おい、クソメガネ」
突然のリヴァイの声。
それでもルーナは顔を上げられなかった。
「わかるだろ、リヴァイ。
ようやく来たって感じだ、私の番が。」
ルーナは気がついていた。
ハンジが団長になってから、リヴァイは1度もクソメガネと呼んだことはなかった。
しかし今日は…
「今、さいっこうにカッコつけたい気分なんだよ。
このまま行かせてくれ。」
少し怯えたような表情のハンジは、口角を上げた。
「じゃあね、アッカーマン夫妻。
またいつか、会おう。」
ルーナは何も言わずに抱きしめた。
体は震えていて、ルーナは溢れだしたら止まらなそうな涙と感情を、必死にこらえていた。
「…心臓を…捧げよ…」
リヴァイがその言葉と共に、ハンジの心臓に拳を置いた。
ハンジは一瞬目を見開いたかと思えば、すぐに笑みに変える。
見たことがないくらいに寂しげで、優しい笑みだ。
「ハハッ!君が言ってんの初めて聞いたよ!」
勢いよく去っていったハンジはたちまち見えなくなってしまった。