Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第58章 赤い鮮血
「読書は楽しいか?」
ジークは本から視線を離さないまま面倒くさそうに答えた。
「面白いよ。あんたの嫁さんががたくさん本を持たせてくれたんだけど…結構読み応えがあるねぇ。これを全部読み終えた頃にはもうこの森を出られるのかな」
「ルーナの奴が?」
よく見ると、たくさん本が積まれている。
こいつにこんなことをしてやるとは…まぁ気が利くというかなんというか…
ジークがページのある一点を見つめたまま手を止めた。
「怪物と闘う者はその過程で自らも怪物とならぬよう心せよ。お前が深淵を覗く時、深淵もまたお前を覗いているのだ…」
「…あ?」
ジークの呟きにリヴァイは眉間に皺を寄せて見下ろす。
「…ここにそう書かれてる。あの人はなかなか難しい本を読むんだな」
ルーナが読書をしているところはほぼ見た事がない。
そんな暇がないということが大きいだろうが。
それによく見るとこれらはあのときエルヴィンの部屋からルーナが形見として持ちだしたものだ。
「これは俺のことでもあるし、お前のことでもあるし、嫁さんのことでもあるよな?」
「…知らねぇよ」
「俺たちはときに人間であることを忘れ、深淵に足を踏み入れる。そして俺もお前も、失われ続けるものに対する贖罪を受けている」
リヴァイは目を細めてジークが見つめているその場所に目を落とした。
「確かに…お前は人間じゃねぇが、俺もあいつも、もうとっくに人間じゃねぇな」
「深淵を覗き込みすぎて、いつの間にかその深みに嵌ってる。いつからだったかな……まぁとにかく、一度闇の世界の住人になっちまうと、戻ってこられないよな」
意味深なことを言う。
こいつの頭の中までバケモンみてぇだ。
人のことは言えねぇかもしれんが。
そう思いながら舌打ちをした。
「まだこんな難しい本ばかり読んでなきゃならないなんて、酷い拷問を思いつくもんだな…そういえば、ワインはもう残ってないのか?」
「あ?もうひと月もここにいるんだぞ。一滴も残ってねぇよ」
ジークはため息を吐いてページを捲った。
「読書を続けろ」
「了解だ、ボス。」