Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第58章 赤い鮮血
「でも…おかしいだろ!ジークの脊髄液を飲んだ時点で、エルディア人は硬直するんだろ?!ラガコ村じゃそうだったって……」
コニーはそう言いながらもハッとなる。
誰もそれを目撃したわけではない…
「ジークが、そう言っただけだ。誰もその現場を見たわけじゃないから私たちには確かめようが無い。だけど…」
ハンジが真剣な瞳を細め、顔を上げた。
「たった一言で済むそのウソの効果は絶大だ。もしジークに脊髄液を盛られても硬直という前兆があるのなら、その前兆が見られない限り毒を盛られた発想すらしない…」
その言葉に、ジャンは急き立てるようにニコロの肩を揺らす。
「でもっ!お前も確証はないんだろ?!」
「あぁ…でもマーレ兵ならジークの脊髄液が今までどんな使われ方をしたのか知ってる。10年くらい前、マーレは敵国を一晩で陥とした。ある晩に何百もの巨人が街中に湧いて出たからだ…予め街中に何百もの脊髄液を服用したエルディア人を忍ばせておけば、ジークがただ一声叫んだだけで街は壊滅するってわけだ。」
皆が呼吸を忘れたように息をとめた。
その残酷な情景が鮮明に想像できてしまう気がする。
「そんなような事でも企んでなきゃ、なんであの怪しいワインを兵団のお偉方に飲ませなきゃいけないのか…俺には分かんねぇけどな…」
ニコロが俯いたのと同時に突然扉が開いた。
「なっ?!フロック?!」
10数名の兵士たちに銃を突きつけられ、皆は固まる。
ブラウン一家も涙を止めて立ち竦んだ。
「ハンジ団長…あなたはジークの居場所を知ってるはずだ。そこまで道案内をしてもらいます。」
「…いや、我々は君たちと言い争うつもりは無いって、兵団からの申し出は届いてないのかい?」
「その申し出は断りました。我々は兵団と交渉しません。」
冷徹なフロックの眼光は、色素が薄く、残酷な光をハンジに突き刺している。