Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第58章 赤い鮮血
包丁を受け取り、そのまま話を続けた。
「サシャは狩人やった。こめぇ頃から弓を教えて森ん獣を射て殺して食ってきた。それが俺らの生き方やったからや。けど、同じ生き方が続けられん時代が来ることは分かっとったから、サシャを森から外に行かした」
包丁はテーブルへ静かに置かれた。
「んで、世界は繋がり、兵士んなったサシャは他所ん土地に攻め入り、人を撃ち、人に撃たれた…結局…森を出たつもりが世界は命ん奪い合いを続ける巨大な森ん中やったんや…サシャが殺されたのは森をさまよったからやと思っとる。せめて子供たちはこの森から出してやらんといかん…」
ニコロは皆に促され、諦めたように床にファルコを置く。
「そうやないとまた、同じところをぐるぐる回るだけやろう。だから過去の罪や憎しみを背負うのは我々大人の責任や。」
その時、カヤという少女がガビに斬りかかり、すんでのところでミカサが阻止した。
「よくも!!お姉ちゃんを!!人殺し!!友達だと思ってたのに!!うわああああああん!わぁぁあん!!」
家族に抱きすくめられながら泣きわめく彼女を背に、アルミンとミカサはガビを別室へ連れて行った。
「ハンジさん、そのボウズの口をゆすいでやってくれ。あのワインが入っちまった。もう、手遅れだと思うけど…」
ハンジはファルコから視線を移し、目を見開いた。
「あのワインには…何が入ってるの?」
ニコロは床に膝をついたまま掠れた声を発した。
「多分、ジークの…脊髄液だ…」
皆が顔面蒼白になり、急いでファルコの口をゆすぎながら体を洗う。
どこもかしこもワインや血がついて真っ赤だ。
「どういうことだ!ワインにジークの脊髄液が入ってるって!」
ジャンがニコロの胸ぐらを掴み、冷や汗を流している。
ニコロは諦めたように力を抜いた。
「このワインは第1回の調査船から大量に積まれていた。短期の調査船には不要な酒と量だった。そして…俺がここで料理人としての立場が安定してきた頃になって、このワインを兵団組織高官らに優先して振る舞うように言われていたんだ…」
「だ、誰からだ?!」
「…イェレナだ…俺の知る限りじゃ、あいつだけがそう働きかけてた。」