Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第57章 カード
「自分の全生命を女の愛というカードに賭けた男が、このカードが殺された時、何事も手につかないほど放心してしまうなら、そんな人間は男ではなくただのオスだよな」
その言葉にリヴァイは暫し沈黙する。
「そうなる前に、俺はそのカードを誰にも渡さない」
「それも叶わないことだってあるだろう?」
やれやれといったようにジークは両手を上げた。
まるでバカにされている気分になり腹ただしさが増すが、言われていることはさっきから全て的を得ている気がする。
「なら…俺の手でそのカードを破る」
誰かの手に渡るくらいなら、誰かの手にかかるくらいなら、俺が握り潰して壊してやりたいとずっと思ってきたことだ。
自分でも呆れるほどの執着心と独占欲だとは思う。
「リヴァイ兵長!!」
その時突然バリスに呼ばれ、リヴァイは腰を上げる。
その後の話に、たちまち驚愕の色を滲ませた。
「ザックレーが殺された?」
「はい。今壁内は、実質的にイェーガー派によって支配されています。全てはジークがエレンやイェレナを介して実行した一連の工作ではないかと考えられています」
木の上から下を見下ろすと、ジークはなにやら本を読み始めている。
「それで?」
「近く、イェーガー派の要求通り、エレンをジークの元まで案内する手筈となっております。」
「ピクシスが?大人しく従うって?」
「お察しの通り、あくまでも司令は堅実な構えです。」
リヴァイは一層眉間のシワを濃くした。
やはりな…そういうことかよ…
くそ…
「エレンを他の奴に食わせるつもりなんだろう?俺たちの手で…」
バリスは言いにくそうに眉をひそめて答えた。
「…そう、です…」
「チッ…」
エレンの命を何度も救った。
その度に何人もの仲間が死んだ。
それが…人類の生き残る希望だと信じて…
そう、信じた結果がこのザマだ…
まるでひでぇ冗談だな…
俺たちが見ていた希望ってのは、
一体なんだったんだ?
あの死闘の果てがこの茶番だと?
リヴァイの脳裏には今、何年もの間ずっと見てきた残酷な記憶が呼び起こされていた。
全滅したリヴァイ班や多くの部下たち、仲間、エルヴィン…全員エレンに希望を託して死んでいったようなものだ。