Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第56章 炎の中■
「一つには、人間というものは結局そういう宿命を持っているのだという考え方がある。ある面では進歩を生み出しながら、他方では絶えず争いを繰り返し、自ら不幸を招来している。それが人間の本来の姿なのだとする考え方だ。」
「私は宿命という言葉は好きではないの」
決められた人生を決められた通りに生きることであり、自分の無力さを肯定することになる気がするから…
これはナイルと話した時にも言った言葉だ。
「…俺も好きじゃないが。…だがもし、そういう考え方に立つならば、人間がお互い努力したとしても、所詮、人間生活に真の幸せというものはもたらされず、人間は繁栄幸福、平和を望みつつも、それをものにすることができないということになる。」
ルーナは複雑そうに眉を寄せる。
しかし、果たして人間とはそのように常に弱く愚かなものなのだろうか。それが「人間の本質」なのだろうか。
「だからあなたは…根本からそれを解決しようと?」
「あぁ。その通りだ。脅威となりうるそのものの根絶を誰も苦しまずに楽に遂行する…これ以上の平和への道はないだろう。」
「……それができるのは…」
「そうだ。エレンと俺だけだ。」
だからとっととするんだな。
そう言ってうんざりしたようにルーナの持ってきた本を手に取り眼鏡を光らせた。
「…へぇ。随分と分厚く難しそうな本じゃないか」
「それ、あなたが昔殺した人の物だったやつだよ。私が1番尊敬していた人の…」
ルーナは冷たく目を細め、なるべく体の力を抜いた。
するとジークは長い瞬きをしながらルーナに向き直った。
「悪いがもう何人殺してきたかなんて数しれないよ。あちこちの村や街、国なんかも一晩で落としてきたんだ。」
ルーナは眉一つ動かさずに小さく言った。
「あぁ…この島のラガコ村の住人を皆んな巨人にしてしまったのも…あなただもんね…」
「…そうか。そんな村の名前だったのか、あれ。」
感情を押さえ込んでいるのを悟られたのか、ジークはルーナをジッと見つめて沈黙してから真剣な顔付きで頷いた。
「俺だってやりたくなかったさ。そもそも初めから、生まれて来なければよかったと、何度も思ってきた。」