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Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛

第54章 幸福の香水


「何も求めないことで豊かになり、何も気にしないことで強くなり、何も恐れないことで幸せになる…」

ポツリと小さく漏らしたその言葉に、リヴァイは振り返った。
彼女はまだベッドに仰向けになったまま震える手でハンカチを握りしめている。

「そう…スミス様が仰っておりましたわ…
誰かに期待するほど不幸になりやすいとも…」

「不幸にするのは他人じゃなく、そう感じる自分なんじゃねぇのか?」

確かに期待はあらゆる苦悩のもとだ。

不幸は感じやすく、幸せは気付きにくい。
本当に欲しいものは…いつも目に見えない。
俺はいつもそれに向かって手を伸ばしてる。
どこまで行けばそれに辿り着くのかと…
途方に暮れる時も…


「…こうも言ってなかったか?
相手の喜びが自分の喜びに変わった時に、人は本当に幸せになれると…」

変わると決断した時、人生は変わり始め、動き出した時に人生は変わる。


「不幸な時に…幸福だった日々を思い出すことほど悲しいものはないですわよね…」


こいつは今、どれだけの悲しみの縁にいるのだろうか?
だとしても…俺には何もできない。
こいつのことを心から愛してやれる男が現れることを願うことしか…
そうだろエルヴィン…

「誰かが自分を変えてくれるなんて思うな。お前を変えることができるのはお前自身だけだ。」

カサンドラはハッとした表情になり、溢れる涙が頬を伝った。

「俺はもう行く。」

「…寂しいです…」

「孤独に慣れろ。そしてお前の傷は、知恵に変えろ。」

容赦ない言葉を投げている自覚はある。
リヴァイはハンカチを奪い返すことはせずに踵を返した。

「待ってリヴァイ様…あの…ごめんなさい…」

手を挙げてしまったことを言っているのだろう。
リヴァイは振り返らずに言った。

「そんなことよりお前のそのキツい香水の匂いを気にしろ」

カサンドラの微かな笑い声が聞こえたかと思えば、背後に迫ってきたのを感じて振り返る。
その瞬間、ブワッと目の前に何かが吹きかけられたのだとわかった。
たちまち広がっていく強烈な香り…

「香水は幸福と同じなんですのよ。人に振りかけると必ず自分にも振りかかる。そう言って、スミス様がくださったものですの」

リヴァイは香水瓶を持って笑顔を作る目の前の女を睨みつける。
しかしその香りは、初めに嗅いだ時と今では少し違って感じられる気がした。
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