Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第54章 幸福の香水
泣きじゃくりながら何度もその名前を口にされ、リヴァイはハンカチを取り出してカサンドラに握らせる。
ベッドに横になったまま震える手で涙を吹き、未だその名を呼び続けている。
「スミス様…愛を…教えてくれた…あなた…今度は忘れることを…教えて…ください…」
リヴァイは目を見開いた。
そうか…こいつが本当に愛していたのは…
エルヴィンだったのか…
「あいつに夢を諦めて死ねと言ったのは俺だ。俺があいつを死に追いやった。」
それを聞いて、カサンドラは息を飲み、目を見開いたまま固まった。
リヴァイは再度カサンドラの顔の両端に手を付き目を細めて冷たく見下ろす。
「…俺が憎いか?」
パシンッ!
カサンドラの手のひらが思い切りリヴァイの頬を掠めた。
リヴァイはその勢いで顔を逸らしたまま動かず表情が見えない。
カサンドラは我に返った。
「ごっ…ごめんなさいっ…!!」
慌てて起き上がろうとするが、リヴァイが覆いかぶさっていて逃れられない。
ゆっくりとこちらを向いたリヴァイの顔は無表情で、そして唇の端が切れている。
カサンドラはみるみる顔を強ばらせた。
「リヴァイ様っ…ごめん…なさい…」
「俺は…あいつを死なせたことを後悔していない。」
「え…」
「お前はなんでもかんでも過去を引きづりすぎじゃねぇか?過去を引きづることは、毎日少しずつ死んでいるも同然だぞ…
俺は、過ぎたことなんざすぐ忘れるようにしている。辛い過去なんかはとくにな…」
エルヴィンの野郎も、いつまでもお前に覚えていてほしいとは思っちゃいねぇよ…
そう言ってリヴァイは起き上がりベッドを下りた。
カサンドラは涙を拭きながら横になったままだ。