Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第54章 幸福の香水
「エルヴィンの野郎は…なんて言っていた?俺と同じことを言ってなかったか?お前のことは抱けねぇと。」
「あの頃はわたくしもまだ10代でしたので…」
カサンドラは彼をここへ招いた時のことを思い出していた。
エルヴィンは、縋り付くように甘えるカサンドラをいつもとても優しく抱き締めてくれた。
抱いて欲しいと懇願すれば、いつもやんわりと断られる。
「ははは、お嬢様、私は君のような無垢でかわいらしい少女を抱く趣味はないよ。私を犯罪者にするつもりかな?」
「でもわたくしは…スミス様のことをお慕いしております。」
「こんなに歳の離れている男の何をそんなに気に入ってくださったのかな?」
エルヴィンは優しく微笑みながらカサンドラの髪を撫でた。
「全てです。その凛々しいお顔も、声も、仕草も、…わたくしに優しくしてくださるところも…」
強請るような淫妖な瞳で見上げてくるカサンドラの顎を指で摘むと、顔を近づけ深淵のような碧眼で見つめ返す。
「驚いたな…君は…たった数秒でそんな女の顔になれるのだな…」
目と鼻の先にある彫りの深い優しいその眼差しに少女の頬は薔薇色に染まる。
「しかし、あまりそのような目で男を見つめてはいけないよ。本能に忠実な男は君のような純粋無垢な少女に残酷で加虐的な衝動を抱いているものだ。このか弱い体が壊されてしまうよ。」
「っ…スミス様になら…どんな抱かれ方をされても…」
「どうやら君は…愛に飢えているようだね。」
エルヴィンはカサンドラの薔薇色の頬に、静かに唇を寄せ、柔らかくかすめた。
「多くの男が君と一緒に馬車に乗りたいと思っているだろう。だがな、本当に君が求めている"愛する人"は、その馬車が故障して動かないときに、君の手を引いて共に歩くのを厭わない男だ」
「お付き合いした方はたくさんいますわ。でも…わたくしを本当に愛してくれる方なんていなかった…」
エルヴィンはフッと笑った。
どこか寂しそうな、そんな笑みで。
「恋につまづいたくらいならば、立ち直るのは簡単だ。けれど、一度でも恋に落ちてしまったら、そこから抜け出すのは容易なことではないよ。」