Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第54章 幸福の香水
「だとしてもわたくしは父を許せませんね。お母様をあんなに愛していたくせに、今ではこんなに裏切っている。」
その親父の行動の意味はわかる。
俺だったら…?
俺だったらそうやって…埋まらない穴を埋めようと同じ行動をとるだろうか?
いや…そんなこと考えたくもねぇ…
「誰かを愛して誰かを失った奴は、何も失っていない奴よりも美しく見える。俺は何度も見てきた…」
何度も何度も…数え切れないくらいの遺族の元へ訪問した。
エルヴィンもルーナもそうだ。
「それからお前がそんなに親父のことが嫌だってんなら、早いとこ自立して、こんな所抜け出すんだな」
「無理よ…わたくしには…どこにも行けない」
「そうやって鳥かごに囚われたまま不満だけの人生送るのか?自分がどれだけできてどこまで行けるかなんて、出発するしか知る術はねぇだろ。」
その言葉に、ハッとなったようにカサンドラは目を見張った。
そこには、仏頂面で見つめてくる不機嫌そうな男の顔。
しかし、どうにも妖艶に見えてしまうのは、藍鼠色の美しい瞳がどこか寂しげに揺れているからだろうか?
「行きたいところには行かなきゃ着かねぇし、やりたいことはやらなきゃできねぇだろ。自分らしく生きられる場所を求めることは逃げじゃねぇ」
この道で正しいのかなんていつも分からねぇが…
来ちまったからには俺は、あいつの手を引いて…
その先へ行くしかねぇんだ…
"自分もその手に引かれて躓いたり転んだりするのではなく、自分がその手を引っ張りあげ、また相手を立たせなくてはならない。
置いて行くということも許されない。
転んだ相手の傷は自分が治してやり、そしてまた隣で歩みを進めていく。
…共に生きるということはそういうことだ"
エルヴィンに言われたあの言葉はずっと俺の中の指針だ。