Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第54章 幸福の香水
「それでも愛を信じろと言うの?…バカバカしいわ愛なんて。とてもつまらない。そんな形のないもの。わたくしは形あるものだけを信じているのです。」
そう言ってカサンドラは潤んだ瞳を泳がせた。
「ここにある装飾品の数々、輝かしいシャンデリアやわたくしの身につけているこの宝石だって、全部きちんと美しく目に映り、形あるものだわ。そういったものは裏切らない。唯一信じられるものだわ。」
愛でるように目を輝かせて言うカサンドラを鋭く睨みつける。
するとカサンドラはゆっくりと視線を合わせ、可愛らしく笑った。
「ほう。それで?そういったもんがお前のつまらねぇ心に愛を与えてくれてると?」
「ええ。その通りよ。このドレスも髪飾りも、なにもかもがわたくし自身を形作っていくの。わたくしがわたくしでいられる唯一の美しいものたちよ」
「違うな。お前は愛がなんなのかを全く理解してねぇ。」
カサンドラの目付きが鋭くなった。
それでも誰もがゾッとするほどの美しい色を放っているまるで宝石のような瞳だ。
しかしリヴァイにとってそれはあまりにも空虚な、色のない瞳に見える。
「どこにでもいるんだよお前みたいな奴は。全部わかったような顔して勝手にひねくれて、愛はつまらねぇだのなんだのと…いいかカサンドラ。お前がつまらないのはお前のせいだ。」
カサンドラが目を見開いた。
僅かに唇が震えているのが見て取れる。
「なによそれ…リヴァイ様はいじわるね…」
「おいおいそれは語弊があるだろ。人の言葉は善意にとれ。その方が何倍も賢い。」
カサンドラは目を潤ませてフイとそっぽを向いた。
「お前は本当は、愛を知りたいし幸福になりたいと思ってる。幸福が現実となるときは、それを誰かと分かちあったときだ。」
そうだ。
俺は今まで、同じものを見たり聞いたり語ったりするのでも、ルーナといる時はどんなものでも幸せに感じた。
全く同じもののはずなのにだ。
それが共に生きるということの幸福なのだと最近気づいた。
「何がお前を苦しめているのか教えてやる。」
リヴァイはカサンドラの顎をつかみ、こちらに向かせ、鋭い翡翠眼を真剣に見つめた。
「お前を苦しめているのは、お前が握りしめているその物差しだ。」
その言葉は鋭利な刃物のようにカサンドラの心を突き刺した。
目を見開いたまま彼女の瞳が揺れ始める。