Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第54章 幸福の香水
「だが俺は妻に対してだけは命を賭けている。妻のためだけに生きていると言ってもいい。これはその証でもある。」
カサンドラはリヴァイの手を静かに下ろし、寂しそうに笑った。
「愛することは悲しみに似ています。愛すれば愛するほど、最期に残るのは絶望です。それ以外には何も残りませんよ…」
そうかもしれない。
そのことはあいつに惚れた時点でずっと考えてきたことだ。
「だが俺は覚悟を決めてる。俺もあいつも…絶望に打ちひしがれるほどヤワじゃねぇし、恐怖に抗う術ならいくらでも心得ている。」
今までだって散々乗り越えてきたんだ。
ただいつも…絶望の縁すれすれの場所で愛し合ってるだけだ。
「わたくしは本物の愛なんて存在しないと思っておりますわ。そんな酔狂じみた言葉自体も信じておりませんし。」
カサンドラが無機質な声色で言い放ち茶菓子に手を伸ばす。
「そういえばお前の父親は、お前の母親を亡くしてからというもの女遊びが激しいらしいな」
なんの遠慮もないその言葉に、カサンドラは伸ばしていた手を止め、驚いたようにリヴァイを見た。
「なぜ…それを…」
「そんなことはいいじゃねぇか。お前だって俺が紅茶好きなことを知っていたんだ。」
カサンドラは顔を曇らせて腕を引っ込め俯いた。
「それでお前は愛を信じられなくなったと。そういうこったろ」
リヴァイは厳しい言葉をぶつけながら平気な顔をして紅茶を啜った。
その音だけが、静寂の中に響く。
「違う…」
暫くして、か弱い声が小さく鼓膜を揺らした。
リヴァイがカップを置いてゆっくりとカサンドラに視線を移す。
「違う。父のことだけではない。わたくしだって、お付き合いしてきた方々はたくさんいたわ。皆、愛してるだなんだと言って、結局全てはお金目的。簡単にわたくしのことを捨てて逃げていったわ。」