Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第53章 板挟み
眉を下げて切なげに視線を落とし、ひと口酒を飲む。
「あいつとは随分久々に口論になったな…昔はそれで長い間離れちまってたことがある…」
それで自分の本心を誤魔化して、シンにあいつを押し付けていた。
心を抉られるように辛い日々だった。
「愛情の示し方をお互いに間違えてしまったことで起こる喧嘩はボタンの掛け違いのようなものですよ。大して問題は無いです。怒りが収まった時、相手に対する愛だけが残るはずです。そうじゃないですか?」
その言葉に僅かに目を見開く。
そうだな・・・
結局俺の中に残るのはいつもあいつに対して膨れ上がる愛だけだ。
むしろ愛しさしか残ってねぇし、大きくなる一方で…だからこそこうして言い合いになる。
一言一言を深く考えすぎて傷ついたりするのは、愛してやまない女からの言葉だからだ。
バリスは優しく笑って酒に口をつけた。
「んん…この酒は美味しいですね」
突然話を変えられてリヴァイは思考を切り替えて顔を上げた。
「…ああ。ピクシス爺さんに貰ったもんだ」
「そうですか、ピクシス司令に。」
「お前は酒が好きなのか?」
「はい。結構好きですよ。ワインとかとくに。」
そう言ってバリスは嬉しそうにまた口をつけた。
リヴァイに特別扱いをされている自分を過信したことはないが、こうして2人だけで酒を飲み交わす日なんて来るとは思わなかったのでやはり嬉しさを隠しきれない。
「そうか。俺は酒は元々そんなに好きじゃねぇんだ。ワインなんかとくにな…」
「そのようですね。兵長はいつも紅茶一筋ですからね。でもたまにはいいもんですよ。酒に溺れて女に溺れるというのは男の性ですしね。」
「…お前は相変わらず言葉選びが上手い奴だな…」
「はは…少し酔ってきちゃいましたかねぇ」
「いい。女に溺れてねぇんなら酒にくらい溺れろお前は。」
そう言ってたちまち空になったバリスのグラスに酒を注いでやった。