Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第53章 板挟み
「兵長、あの…ルーナさんはどちらへ?」
「飲み会だとか言ってたぞ。呑気なもんだろ」
「…そうですか。あっ、僕はこんなにはっ」
「いいだろ、たまにはお前も付き合え。」
兵長夫妻の部屋で酒を注がれ、兵長と2人だけで飲み交わすというこの状況は初めてだ。
本来なら喜ぶべきことなはずなのにあまり喜べないのは、目の前にいるリヴァイが未だ不機嫌であるということ。
恐らく喧嘩の延長線上にいるだろうことは分かっているし、明日にはカサンドラ嬢の屋敷へ赴かなくてはならないこともあり、酒と自分との会話でその乱れた心中を少しでも誤魔化したいのだろうと察する。
なのでバリスは至って冷静に酒に口をつけた。
この部屋では紅茶しかいれてもらったことがないし、リヴァイは以前に酒はそんなに好きじゃないと言っていた。
しかし目の前のリヴァイは仏頂面のままグイグイと酒を飲んでいる。
やはり酔いたいのだろうか。
「あのー…ルーナさんとはまだわだかまりが解けていないのですか?」
バリスは黙っているのも居心地悪いのできちんとこの話を切り出した。
しかしリヴァイは黙っている。
「喧嘩って立派な愛情表現だとは思いますよ。でも、相手のどんな一面もポジティブに捉え直すことも重要だと思います。」
リヴァイはついにグラスを置いた。
全く酔えていないようだ。
「まさかあいつが…俺をほかの女の元へ進んで促すとは思わなかった…」
真顔で静かにそう呟いた。
相当なショックだったのだろうと察し、バリスは顔を歪める。
「あいつは俺のことよりも、この兵団の方が大切なんだろうよ…」
「いえ、そういうことではないですよ。兵長が他の女性とそういうことをして、ルーナさんが正気でいられるわけがない」
即答したバリスにリヴァイは眉をひそめて鋭い視線を送る。
「…ならなぜあいつはあんなことを言いやがったんだ」
"私だってあなたが言うようなガキ…じゃないんだし。つべこべ言わないよ…"
あの一言は確かにキツかったとは思う。
けれど…
「彼女の本心ではないですよ。兵長だって本当はお分かりでしょう?」
リヴァイの眉がピクリと動いた。