Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第53章 板挟み
「足を滑らせてもすぐに回復はできますが、口を滑らせた場合はその傷は一生物になる。そんなことが起こる前にいいかげん目を覚ましてください。」
2人は目を逸らしたまま俯いている。
「喧嘩というのは、たいていの場合、お互いの誤解がより一層大きくなるものです。だから早いとこ仲直りしてください。」
「・・・」
バリスはため息を吐いた。
なんという負けず嫌いな2人だろう。
確かにどちらの気持ちもよく分かるが…
このままというわけにはいかない。
「口喧嘩は立派な話し合いだとは思いますよ。でもこうして言い争うということは、実はどちらも悪いと感じているからだと思いますよ」
いいですか、お二人とも。
そう言ってバリスは、まるで兄弟喧嘩をする子供たちに説教をするように、背の低い2人を鋭く見下ろした。
「素直に謝れるほうが大人です。
謝るのを先延ばししても、いいことはありません。2人の関係維持を考えるなら、自分では納得ができなくても、気持ちを落ち着かせて、冷静な対応を心がけることも大切です。」
「・・・」
まだ黙りこくっている2人にため息を吐きながら、心の底から尊敬しているこの2人を真剣に説教をしている自分を客観的に見て更にため息を吐く。
「喧嘩がヒートアップしてくれば、途中で火を消し止めておくほうが延焼を防げます。
喧嘩中に謝って仲直りができるなら、それに越したことはないのですよ。」
「・・・」
どちらかが先に謝るのを待っているんだろうか?
バリスは次第に沈黙に耐えきれなくなってきていた。
自分は間違ったことを言っているだろうかと不安すら生まれてきてしまう。
「バリス…すまない」
「ごめんねバリス…」
「・・・えっ。」
ようやく口を開いたかと思えば、自分への謝罪…
バリスは目を見張った。
目の前の2人は叱られた子供のように小さくなっている。
「いや…あの…僕に謝るのではなくてですね…」
「こんなことに時間をとらせてすまん」
「巻き込んでごめんねバリス…」
「ちょっ…と…」
自分はこのまま出ていくべきだろうか?
いやそうした方がいいな。
一旦2人きりにさせよう。
そう判断したバリスは
「では失礼します。今日中に仲直りしてください。
いいですね!?」
そう強く念を押して部屋を出ていった。