Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第53章 板挟み
カサンドラという女は一見、十代のようにも見える。
かと思えばふとした艶やかな仕草や丁寧な言葉遣いはもっと上の年齢ともとれる。
しかし実際は20才だということは最近知った事実だ。
美しく輝くブロンドの髪は内巻きに巻いてあり、小綺麗な装飾のついたリボンを付けている。
翡翠のような瞳にふわりとレースの着いたドレスにそれに見合った日傘。
まさにアンティーク人形そのものと呼ぶにふさわしい、誰もが振り返るような佇まいのその女は、近頃しょっちゅう兵舎へ押しかけてくる。
夜会で出会ったきり、何年も飽きることなくひたすらリヴァイに手紙を送り続けている。
奪還作戦や壁の外の巨人を全滅させ、兵団がだいぶ落ち着いているだろうと勝手に思われている今、堰を切ったようにリヴァイを尋ねてくるようになった。
「リヴァイ様…お元気でしたか?」
声まで透き通っていて、まるで小鳥のようにとても美しい。
「・・・何の用だ」
「そんな冷たいことを仰らないでくださいな。リヴァイ様のご無事なお姿をこうして見に来ているのです。」
「悪いが俺は忙しい」
今すぐに踵を返したいところ、というかそもそもこうして顔を出すこともせず一切の無視をしたいところだが、そうもできない理由がある。
彼女は上層階級の貴族の娘で昔から兵団にかなり多額の資金投資をしてくれている。
エルヴィンがいた頃は彼がいつも上手く対応し接待してくれていたのだが、その彼がいなくなった今は、彼女の対象はもう完全にリヴァイだけだった。
重要なこの時期にこの娘から資金投資を止められてしまっては、調査兵団の存続は危うくなる。
その上、ルーナからもカサンドラ嬢に対してはきちんとした対応をしておくようになど半ば命令口調で言いつけられている。
まるでエルヴィンのようだと思いながらも、ルーナの言うことならば、目の前にいるこの女を無下にもできない。
ただひたすら苛立ちが募るばかりだ。