第2章 初めて
「お、やっているな」
訓練兵が教官に罵声を浴びさせられている横をある二人の大人が横切る。
一人は白髪の眼鏡をかけた男。
もう一人はもう少し若いが、訓練兵には見えない。彼もまた立派な兵士なのだろうか。
若い兵士は眼鏡をかけた男の横でおずおずと口を開いた。
「…自分も訓練兵の時を思い出します……」
そんな若い兵士の言葉を聞いて白髪の男は目を細め微かに口角をあげた。
「…あのどうかつには何の意味が…?」
「…通過儀礼だ。今までの自分を全部捨て真っ白な状態にするのだ」
そういった男を若い兵士は横目で見るとふと何かに気づいた。
「…あの、何も言われてない子がいるみたいですけど…」
すると男はふっ、とものありげに笑い、「…既に通過儀礼をした者には必要ない」と言葉を放った。
そして訓練兵達の数人を見て口を開いた。
「…恐らく三年前の地獄を見てきた子達だろう…………面構えが違う」