第7章 7
『それじゃあ先に帰ってるね』
「気をつけて帰れよ」
『お父さんもね』
ドアの方を見ると五条さんが携帯を弄って立っていた。
帰らないのかなと思っているとコチラを見て携帯を閉じた。
「準備できた?」
『はぁ』
「送ってく、帰ろ」
『え、大丈夫です。1人で帰ります。』
「ダメ。女の子1人は危ないから」
五条さんは私の手を掴んでお店を出た。
家を知っているから五条さんは何も言わずズンズンと歩いて行く。
なんだろう?怒ってるのか?無言が気まずい……
『あ、あの』
「ん?」
『今日はありがとうございました。本当に手伝ってくれるとは思わなくて驚きました。』
「あぁ、別に...でも、面倒だからもうやらない」
『は、はぁ...』
なんでこの人はこんな言い方しかできないのかなー
そこからはまた無言で、ズンズンと歩いてた五条さんがピタッと止まった。
「ちょっと待ってて」
『え?』
「すぐだから」
そう言うと五条さんはパッと手を離してコンビニに入っていった。
なんか買い物だろうか...一緒に入るのも野暮なので入口付近で待つ。
携帯を開いて数分経つと五条さんが袋を持って出てきた。
「お待たせ」
そう言って袋を私の目の前に突き出してくるので勢いで一歩後ろへ下がった。
『ん?なに?』
「見て」
そう言われて恐る恐る袋を受け取り中を見るとお菓子とジュースが袋に一杯入っていた。
『これは?』
「あげる」
『え?なんで?』
こんなに小袋一杯に入ってるお菓子とジュースを貰う意味が分からない。
むしろさっきまでこの人、私に怒ってたんじゃないの?
五条さんを見てもサングラスのせいで五条さんがどんな顔をしてるのか全く分からず意図が読めない。
「今日のバイト代で買ったの」
『え?』
「人生初めてのバイト代」
『初めての?』
「そう。初めてはカノンちゃんにプレゼントしたいと思ったからあげる」
「じゃあ、帰ろ」と微笑んで言って五条さんはまた私の手を取って歩き始めた。
怒ってた訳じゃないんだ...
むしろプレゼントを考えてくれてたんだ。
手にくる少しの重みと動く度にガサガサ鳴るビニール袋がこんなにも愛おしいと思ったことがあるだろうか...