第7章 7
カラン、カラン。
五条さんの態度に言い返そうとしたタイミングでお店のドアが開く音が聞こえた。
横目で見ると最近よく見る顔が2つ。
夏油さんと硝子が意地の悪い笑顔で五条さんを見ていた。
五条さんはバツが悪いのか顔を大きく背けた。
『夏油さん、硝子、いらっしゃい』
「こんにちは、武笠さん」
「よっ」
「新しいバイト君が入ったって聞いたから硝子と見に来ちゃった」
『あぁ...』
そう言って、3人で五条さんを見ると顔を背けているせいで顔は見えないが照れているのか耳が赤く染まっているのが分かった。
「新人くん、私は緑茶で」
「新人、私はコーヒーブラック」
「ふっざけんなよ...なんで俺が」
『私、いれますね。』
「あ、カノンはいいよ。コッチに来て私に傷見せて」
硝子が手招きして呼ぶので、真っ赤にして怒ってる五条さんを横目に硝子の横へ移動した。
「痛みはどう?思ったより腫れが酷くなくて良かった。これなら今週中には綺麗になりそうだね」
『うん、ありがとう。硝子の処置のお陰で助かったよ。』
硝子がの指が優しく頬に触れた時に微かに煙草の匂いがして、煙草は好きじゃないけど硝子の指から香る煙草の匂いは嫌じゃなくて、笑顔でお礼を伝えると硝子も優しく微笑み返してくれた。
「はい、お茶とコーヒーブラックね」
そう言って、夏油さんと硝子の前にカップを置いたのは今の今まで静かにしていた父だ。
カップの横にデザート皿があってチーズケーキが乗っていた。
「硝子ちゃんが手当してくれたんだね。ありがとう。これはおじさんからほんの気持ち」
「あ、わざわざスミマセン。」
「いいや、こちらこそ本当にありがとう。硝子ちゃんのお陰で助かったの聞いてるから...これからも仲良くしてやってね」
そう言って微笑む父に本当は『恥ずかしいから止めて』と言いたかったが自分がまいた種を丁寧に片付けてくれる父に言えなかった。
「優しいお父さんだね」
チーズケーキを見ながら硝子が言った。
『うん、ちょっと恥ずかしいけど』
「そう?イイじゃん。親が守ってくれるなんて...大事にしなよ。」
そう言ってチーズケーキを食べる硝子は美味しいと微笑んでた。