第7章 7
学校が終わり、バイトへ行く時間。
いつも歩く道が今日は心が浮き足立ってるせいか柔らかく弾み足取りがとても軽やかに進む。
道もお店もいつもと変わらない。
ドアを開けてお店の中も何も変わらない。
カウンターの中に五条さんが不満そうにエプロンを付けて居ること以外は
「...おかえり」
『ただいま。どう?大丈夫そう?』
「くっっそ、つまんない!なんで俺がこんな事しなきゃなんねぇの!!」
『責任とってって言ったじゃん』
責任とって五条さんは私の手伝いとして1日バイトに出てもらってる。
とても不満らしく愚痴愚痴と文句ばっかり言ってるが、ちゃんとお店に来て黒いエプロンをしながら手伝いをしてるのがまた笑える。
「え!カノンちゃん結婚すんのかい?」
「しませんよ。なに言ってるんですが繁咲さん。」
笑いながら言ってくる繁咲さんの言葉を五条さんの横に居た父がピシャリと払い除けた。
「カノンちゃんその顔どーしたんだい」
『あぁ、親知らず2本抜いたら凄い腫れちゃって』
「うぇーそれは災難だね。せっかくのイケメンが台無しで女の子達も悲しんでるだろうに」
『ははっ、そんな事ないですよ』
「オッサン」
繁咲さんと冗談を軽く交わしていると五条さんが繁咲さんを呼んだ。
お客さんに向かってオッサンって...
「それ、もう飲まねぇの?」
五条さんがそう言って指した繁咲さんのカップは空だった。
「あぁ、じゃあ今日はご馳走様しようかな」
『ありがとうございます。カップ下げますね』
「ありがとう。それじゃあカノンちゃん、またね」
『ありがとうございました。またお待ちしております。』
支払いを終えて手を振って帰って行く繁咲さんに小さく手を振ってお見送りをした。
繁咲さんが見えなくなるのを確認して横でふんぞり返っている五条さんを見た。
『ちょっと!不満なのは分かりますが、その態度はやめて』
「なにが?俺なんかしました?キチンと言われたことしましたけど?」
『そうじゃなくて、言葉遣いとか』
「あーね、別にオッサン怒ってなかったし良くね」
『だから!そう言うことじゃなくて接客の基本です!』
「はぁ?基本とかうぜぇ。俺がやりたくてやってる訳じゃねぇんだから押し付けんな」
『は、はぁ!?』