第1章 1
『いらっしゃいませ』
あの時以来、見てなかったあの白銀の髪。
あの時、一瞬だけ合った綺麗な碧眼がまた私を見ている。
少しだけ緊張の走った声を無視するかのように彼はカウンターの前にきてメニューを見ながら一言ポッリと声を発した。
「テイクアウトできる?」
見た目だけじゃなく声も素敵なのか。
天は二物を与えずと言うが天は彼に何物与えてるんだ。
最近、始めたテイクアウト。
彼の初めて聞く声とやはり彼が目の前に存在してる現実に驚きながらも『できます。』と言って、テイクアウト用のメニューを渡した。
「じゃあ、BLTサンドとコーヒー」
『あ、はい。』
そう言うと彼はカウンターに寄り掛かりながらそっぽを向き携帯を弄り始めた。
彼のその態度に少しだけイラッとしながらBLTサンドとコーヒーを準備し始めた。
コーヒーの豆を引く音と野菜を切る音。
私の作業する音が彼と私の間を通り抜けていく。
すると突然、携帯をパチンと閉じて彼が
「ねぇ」
と声を掛けてきたので、作業しつつ顔を上げると彼はサングラス越しからコチラを見て話しかけてきた。
「さっきなんで泣いてたの?」
『え?』
なんの事だろうと一瞬、考えて...あ、コンタクトの事!!と思い恥ずかしいなと否定しようとしたら立て続けに彼が
「好きな女にでもフラれた?」
「それとも大事な人でも死んだ?」
「まぁどっちでもいいんだけどさ、本当に泣くのとか無駄だよね」
「そんなくだらい事で泣くのとか本当に止めた方がいいよ」
「マジでシラケるからさ」