第6章 6
『教えません』
「なんで?」
『別に五条さんに言ってもらいたい訳じゃないので』
「ケチだなぁー」
『そんな事はどうでもイイから、早く退いてください。』
カノンちゃんが不服そうに俺の腕をグッと押してきた。
「なんで?」
『いちいち近いんですよ。もう少し離れて下さい。』
カノンちゃんがそんな事を言うから離れずにもう少し顔を近付けてみたら、みるみるうちにカノンちゃんの顔が真っ赤に染まってしまった。
「照れちゃって、可愛いー♡」
『可愛くないです。からかわないで下さい。』
「なんで?からかってはいるけど、本当に可愛いと思ったよ」
カノンちゃんは眉間に皺を寄せながらフーッとため息を吐いた。
『だから、そう言うのはもっと可愛い子に言ってください。私に言われてもどう返せばいいか分からないし困ります。』
「...なんで?俺は可愛い子に言いたいんじゃなくて、カノンちゃんだから言ってるんだけど」
そう言ってそっぽを向いてしまった。
彼女は自分に対する言葉を正面から受け取ることが無い。
俺がどんなに言ってもきっと全部、冗談に捉えるんだろう。
そう思ったら椅子に座っている彼女の膝の上に跨った。
カノンちゃんは案の定ビックリして『何!?』と慌てていたが俺はお構い無しにゼロ距離になった距離でカノンちゃんを見た。
「じゃあ別に良いよ。今は」
『な、何が?』
「俺が可愛いって言ったのもエッチしたいって言ったのも全部、冗談に受け取っても良いよ。」
『えっ...と、』
「でも、これからも言い続けるから。カノンちゃんが可愛いって事もカノンちゃんとエッチしたいって事も思う度に言うから」
『なに言ってるんですか!止めてくださいよ!!』
「ずっと言い続ける。だから、俺だけにしてよ」