第6章 6
椅子に座ってココアを飲んでいたら五条さんが机に両手を着いて私の目の前に居た。
目の前には五条さんの顔、左右には五条さんの腕があり椅子からも立ち上がれないし横からも逃げられない。
「カノンちゃんさ...」
『なんですか?』
あまりの近さにドキドキしたが悟られないように応えた。
「俺に会えない間、寂しくなかった?」
『え?』
五条さんから思ってもみない言葉が出てきて間抜けな返事をしてしまった。
「寂しくなかった?」
『えっと...別に...』
「俺は...めちゃくちゃムカついた。」
寂しいか聞いてきといて自分はムカついたって意味分からない。
とりあえず五条さんの話を聞く。
「なんでカノンちゃんがあんなにキレてたのかも分かんねぇし、病院行ってもお店に行っても会えないし、電話しても出てくれないし、のくせに傑とは会ってて傑と色んな話してるし...めっちゃムカつく...」
いつも思うけど、この人は何を言ってるんだろう。
怒ったのは分からないだろうなとは思ってたけど、夏油さんと会ってた事にまさかイライラされるとは思わなかった。
これって巷で聞く『嫉妬』ってやつか?
でも、言ったら「は?違うし、キモっ」て言われそうだな...
とりあえず目の前で項垂れてる五条さんの頭を優しく撫でてみた。
五条さんは黙ってる。
『怒ってスミマセンでした。電話も出なくてゴメンなさい。夏油さんはお店に良く来てくださるんです。』
「知ってる...なんで怒ってたの?避けてたのは?なんで?」
『怒ってたのは、色々と...』
「色々って?」
『その、エ、エッチしたいくらいにって言われたのが!!嫌で...』
普段言わない単語を無理やり言わなきゃいけなくて恥ずかしくて顔が赤くなってしまう。
「あー、あれ、嫌だった?」
『嫌です。』
「なんで?俺のこと嫌い?」
『嫌いとかじゃなくて...あまり言われて嬉しい言葉ではないです。』
「じゃあ、カノンちゃんはなんて言われたい?」
『私ですか?』
「うん。言ってあげるから教えて」
笑顔で聞いてくる五条さん。