第6章 6
久しぶりに会うカノンちゃんは最後に会った時みたいな怒った顔ではなく、いつも見せる驚いた顔をしてた。
「元気にしてた?インフル治った?」
『いつの話してるんですか、元気にしてました。』
こちらの顔を見るなり近付いてきて手を伸ばすから何かと思って半歩下がってしまった。
『...顔どうしたんですか?』
俺が下がったのを気にしたのか手を退いて、自分の顔の目下をトンと指してた。
来る前に傑と殴りあった怪我だ。
「傑に殴られたの」
『け、喧嘩ですか?』
「んー、まぁでもいつもの事だから」
『大丈夫ですか?』
「大丈夫だよ」
『ちょっと待っててください』
そう言うと、カノンちゃんは部屋を出ていってしまった。
部屋に1人残されて暇だったので、ベッドに腰掛けて待つ。
大人しくするのが苦手なのですぐ立ち上がってゆっくりと部屋を見渡す。
前に来た時はちゃんと見なかったけど綺麗に整頓されてる。
身に覚えのある靴箱が目に入って、立ち上がるとタイミング良くカノンが戻ってきた。
手にはマグカップが2つ。
それを机に置くとカノンちゃんが近付いてきて『はい』って何かを差し出してきた。
「なにこれ」
『絆創膏です。良かったら使ってください。』
「はぁ」
絆創膏を受け取ると今度はマグカップを差し出してきた。
中を除くと湯気から甘い香りが漂ってきた。
『ココア、良かったら飲んでください。夜はまだ少し肌寒いですよね』
ココアを一口飲むと口の中に甘ったるさがドロっと広がった。
なんでこんなに甘ったるいんだ?
『お、美味しいですか?』
不思議そうにカノンちゃんが聞いてきた。
「美味しいけど、めっちゃ甘いね。」
『ですよね、すみません。作り直してきます。』
「あ、いいよ。俺これくらいが丁度イイし」
『あ、本当にそうだったんですね』
「本当にって?」
『夏油さんがこのまえ言ってたので』
なるほどね。
道理でこの甘さなわけだ。
俺の事を知ってくれて合わせてくれるのは嬉しい。
けど、それを俺からじゃなくて傑からって言うのが面白くない。