第6章 6
「聞いてない」
「なにが?」
帰ってからいの一番に傑に言えば、なんの事って顔された。
そりゃそうだ。
主語がないもん。
「カノンちゃんのお店」
「あぁ、武笠さんから聞いたのか?」
「いや、オッサン」
「おじさんか、他に何か聞いた?」
「...緑茶入れとくって」
「そう。楽しみにしておくよ。」
コイツ...俺が悶々としてるのを分かってて何も言わないな
傑のベッドの上で悶々とした気持ちを表現してバタバタするとベッドに寄りかかってた傑が「埃が立つ」と言ってきた。
「そんなに会いたいなら会いにいけよ」
「行っとるわ!」
「じゃあ、私に文句言うなよ。」
「言ってねぇし」
「会えないって事は武笠さんが会いたくないんだろう」
ぐぅのねも出ない。
「もぅ、やめたらどうだ」
「何を?」
「武笠さんに会うの」
「は?会いに行けったり止めろったり、なんなの?」
「ずっと続けられないだろ。いつかは彼女と別れが来る。」
傑の言いたい事は分かってる。分かってるけど...
「いつ?いつかっていつ?」
「具体的には私も分からないよ」
「じゃあ、イイじゃん。」
「だから、それだとお前も彼女も辛くなるだろ」
「なに?俺の事、心配してるの?」
「お前じゃない。武笠さんの心配」
「尚更、心配ご無用だね。」
「はぁ?」
「俺が離れられなくなった時に離すと思う?離さないだろ。絶対に」
傑は知ってる。
俺が何かに執着した事がないことを
だからこそ分かるだろ。
俺が何かに執着した時は絶対に手放さないことを
「てかさ、傑ってカノンちゃんの事キライだと思ってた」
「嫌いじゃないよ。」
「ふーん」
「むしろ、自分の気持ちに素直になれないウジウジしてる感じ。タイプだね」
「はぁ?おまえとは女の好み合わないわ」
「良かったよ。取り合いにならなくて」
「取り合いになってもお前と俺じゃ天地の差あり過ぎて勝てないだろ」
傑が殴り掛かってきた。