第6章 6
「あら?あらあらあら?」
「...」
「最近よく会うね?」
「...」
「おじさんのストーカー?」
「違ぇわ!!」
病院の前のベンチに座ってたらカノンちゃんのオッサンに会った。
肝心のカノンちゃんには会えないのにオッサンに会えちゃう俺!!
「何してるの?」
「別に」
「おじさんはお見舞いだよ」
「聞いてねぇよ」
「奥さんの」
「...そっ」
カノンちゃんが病院へ通ってたのは母親の為か...身内だろうなって思ってたけど、母親だったのか...道理で母親に会わないわけだ。
「もう長いの?」
「長かったけどそろそろ退院できるんだ。」
「そっ、良かったじゃん」
「うん」
それだけ言うと無言。
カノンちゃんもオッサンも話を広げようとしないからすーぐ無言になる。隣座るならなんか言えやオッサン〜と念を送ったら届いたのかオッサンが喋り出した。
「最近、カノンと会ってないの?」
「なに?野暮なこと聞くじゃん」
「そう?」
「そう。あんま娘の事に口出ししてると嫌われるよ、おじさん♡」
「そう。じゃあ、止めとく。」
嫌味っぽく言ったのにオッサンは素直に受け取って全く効いてない。
つまんねぇ、イジりがいねぇな。
「じゃあ、おじさん帰るね」
そう言って、やっとオッサンが立ち上がったので心の中で「さっさと帰れー!」と唱えれば効いたのか?「あっ」とオッサンが何かを思い出したかの様に声を出した。
「夏油くんに今度、緑茶仕入れとくって伝えといて」
「あ?なんで、オッサンが傑のこと知ってんの?」
「お店に通ってくれてるから」
「え?」
「2ヶ月、3ヶ月?位前から通ってくれてるよ。このまえ話したら緑茶が好きって教えてくれたから夏油くん用に用意しようと思って」
「え?」
「じゃあ、またご飯食べにおいでね」
「え?」
「暗くなる前に帰りなさい。じゃあね」
言うだけ言ってオッサンは帰って行った。
俺はオッサンの情報に衝撃を受けて暫く動けなかった。