第4章 4
彼はとても素直な人なんだろう。
素直過ぎて捻くれ者なのかな?
平気で酷い事を言うし、人の事を煽るし、傷付ける。
...撤回。やっぱり性格悪すぎ。
でも、彼のたまに言う言葉は体裁を気にして自信の無い私に自信を付けさせてくれる。
『私』という存在を見てくれる。
彼は私から離れるとソファーに座ってTVを見始め、私は急いで夕食の準備を始めた。
時々、後ろを振り向いて五条さんの後ろ姿を確認する。
あんなに苦手だった人なのにだったのに、今は少しだけこの空間が居心地良いと思ってしまった。
『五条さん、ごはんできました。』
「んー、なにか手伝うことある?」
『大丈夫です。座っててください』
「わかった」
五条さんを席に案内して配膳をしていく。
今日はラザニアとポトフとサラダとイカと大根の煮物を出した。
「え?なんでここに突然のイカ大根?」
『これは昨日イカが安くて!!昨日から煮込んでたのを思い出したんです。だから洋食になったけど、食べないとって思って出しました。』
「ははっ、めっちゃウケる」
『嫌なら下げます。』
「あー、嫌じゃない嫌じゃない。食うから置いて」
『はい。座ってください。食べましょ』
「はーい。カノンちゃん、いただきます。」
『どうぞ。私もいただきます。』
「カノンちゃん、イカ大根めっちゃ美味いよ」
『そりゃ良かったです。』
知らない人とご飯を食べるのは好きじゃない。
緊張するし、ご飯食べてる姿って隙を見せてるみたいで嫌いだ。
だからいつも親しくない人と外食する時はドリンクしか頼まない。
でも、名前くらいしか知らないこの人とする食事はあんまり嫌じゃない。
彼はお腹よっぽど空いてたのか、あっという間に完食して2人で食器を片付けた。
洗った食器を拭きながら彼の事を少しだけ教えてくれた。
私とは同い年で学校の寮に入ってる事、傑君とは隣の部屋同士で同じクラスもあってずっと一緒にいること、喧嘩もよくすること。
改めて彼の事を何も知らないのに私、なんでこの人と食事したり出掛けたりしたんだろう。って改めて思ってしまった。
彼が凄いのか?私がバカなのか。