第4章 4
『き、今日は、せっかくのお誕生日のお出掛けなのに最後の方で雰囲気悪くしてごめんなさい。あまり行ったことのないお店に行けたり色々な事が楽しめて本当に楽しかったです。』
『ありがとうございました。』
顔を真っ赤にして、いつもキリッとしてる眉毛を八の字に下げて、意志の強い隙のない瞳を目尻を下げて優しく三日月を描いてた。
彼女が普段から笑い慣れてない明白な笑顔。
笑わない方が美人だよって思う位に彼女の笑顔は不自然だった。
なんだったら、友達にムカつく事を言われた時に笑った方が綺麗に上手に笑えてたと思う。
それでも、なんでかな?
俺はこの不細工な笑顔がめちゃくちゃ可愛いと思ってしまって、そのまま彼女を抱きしめてしまった。
『...え、なに?ちょ、ちょっと離してください。』
「カノンちゃんさ、笑うの下手くそ過ぎ」
『は?』
「喪黒福造みたい」
『...は?マジで喧嘩売ってます?』
「いや、売ってない」
『いや、離してよ。もう二度と笑いません。』
「待って、喪黒福造は言い過ぎた。」
『じゃあ、なに?』
「言い過ぎたとは思うけど、やっぱり笑うの下手くそ過ぎ」
『...』
「だから、これからは俺の前だけで笑って」
『...にそれ、意味分かんない。』
抱きしめたままカノンちゃんを見ると、喪黒福造がよほどムカついたのか既にいつもの顔に戻っていた。
なんならちょっと怒ってる。
『もういいです。とりあえず早く離してください。』
「んー、もうちょっと♡」
『はぁ?本当にいい加減にして、叫びますよ!』
「叫んでもいいよ。チュッて塞ぐから」
『ちょっと、マジで、本当に、止めて。無理。キショ。』
「ねぇ、知ってる?さっきからちょいちょいカノンちゃんも俺の繊細な心を傷付けてるんだよ?」
『んふっ、やめて下さい。笑わせないで。もう、とりあえず本当に離してください。夕食作りますから。』
「え?カノンちゃん作ってくれるの?」
『そうですよ。好き嫌いあります?』
「あるけど、カノンちゃんが作った物ならなんでもいいよ」
『なんでですか?』
「んー、お店で作ってくれたサンドイッチ美味かったから」