第4章 4
「カノンちゃん」
クローゼットに手を着いてカノンちゃんが逃げないように退路を塞ぐ。俺が見下ろす様にカノンちゃんを見ると危機を感じてるのか、俺から背を向けてクローゼットの方へ顔を隠してしまった。
「さっきの話の続きだけど...俺、カノンちゃんのに可愛いって言ったの本心なんだ。それを疑われたのにもちょっと腹立って、それであの女達に聞かれても嘘言われるしムカつくこと言われてもヘラヘラしてるカノンちゃんにも腹立って、酷い言い方しちゃったかもしれないンだけどさ...」
それでもカノンちゃんはこちらを見てくれない。
「俺、本当にデート楽しみにしてたんだ。終わったら最後に『また連れて行ってくださいって』カノンちゃんに言って貰えるようなデートにしたかったのに、あんな顔するとは思わなくて」
んーと、んーと、あと何を言えばいいんだろう。
どうすればいいんだろう。
なんでこんなに気を使わなきゃいけないんだろう。
なんか、だんだん面倒くさくなってきた。
『大丈夫です。』
「へ?」
色々と考えてたら、カノンちゃんがいつの間にか俺の方を向いてて、俺の目を真っ直ぐ見ていた。
『もう怒ってないです。』
「え?怒ってたじゃん」
『怒ってました。けど、もう怒れないです。』
「なんで?また我慢してんの?」
『してません。』
「なんで?」
『私も悪かったんです。五条さんが言ってる事は本当の事で、私ずっと自分の体裁の事ばかり考えてたんです。だから、五条さんが言ってること全部ウソだと思って聞いてました。五条さん性格悪いし。』
「待って、最後の一言いる?てか、最初っから全部ひどくない?」
『でも、五条さんは私の事を気にかけてくれて...その、色々と考えてくれてたなんて知らずにごめんなさい。』
「...」
え?待って、今の俺めっちゃダサくない?
なんで、女の子にこんな事、言われてんの?
なんか、俺が馬鹿みたいに張り切って、から回ってるの気付かなくてごめんなさい。ってめっちゃ謝られてくそダサくない。
え、どうしよう、帰りたい。
なんか、めちゃくちゃダサすぎる自分に心折れそうになってたら、服の端をクンッと握られてて、カノンちゃんが顔を真っ赤にしてた。