第4章 4
走って、走って、走り続けて、やっとの思いで着いたのはお店だった。
彼に言われた事や自分の今までの言動、周りからの声を思い出してはどうしても自分が正しい。と思いたくて理由を探したけど、結局そんなものはなくて。
彼が言う様に私は私が勝手に似合わないと思ってる理由を人が作った「王子」「カッコイイ」を盾にしてきたって理由が益々、浮き彫りになってしまって、他人のせいにして自分を守るなんて本当に自分の性格を疑うし、自分が大嫌いだと思ってしまった。
ランチタイムが終わってディナータイムに向けての休憩と下拵えをしてるのであろう扉の前には「CLOSE」と看板が出ていたが扉が空いてるのは知っているので、何度か深呼吸をして走ってきて崩れた髪の毛を扉のガラスで薄っらと確認して手ぐしで直す。
扉を開けると突然、開けた扉が私の手に重なられた手によって力一杯、閉められた。
「ねぇ、足速すぎ。モーリス・グリーンの生まれ変わりなの?」
重ねた手の主は今1番会いたくない人、五条さんだった。
自分だってめちゃくちゃ足速いじゃん。呼吸乱れてないし。
ずっと追いかけてきたの?探したの?
モーリス・グリーンまだ生きてるよ。
言いたいことが沢山あるけど何も話したくなくて彼の手を払い除けてもう一度ドアを押した。
「待てって」
『離してください』
「俺、違うこと言った?正しい事しか言ってないじゃん。だから謝らないけどさ」
...彼は一体何を言いに来たんだ。
彼にこれ以上、とやかく言われたくないし。彼とも話したくない。
無視を決めてお店に入ろうとした。
「ごめん」
彼の初めての謝罪に手が止まった。
「そんな顔させるつもりじゃなかった。ごめん」
『...』
彼の言葉になんて返そうか困ってるドアが勝手に開いた。
「...なにしてるの?」